iPhoneとさよなら
僕はiPhoneの信者だった。
発売前から、なぜ日本でiPhone のような機械が出ないのか不思議でならなかった。規制が主原因だと思っていたが、iPhone が出た時には規制が変わったのか、あまり遅れを取らずに発売された。もちろん発売後直ぐに買った。
1−5まですべての機種を使った。電話機というより、僕の脳の一部のようになって、iPhoneなしでは生きられない身体になっていた。
しかし、悲しいことに電池が2年持たず、大抵1年半で駄目になるか、なくす。iPhone が出た頃は、電池交換が出来ない端末であることが信じられなかったが、今では電池を交換する代わりに機種ごと交換することに慣れてしまった。
僕がiPhone を好きな理由は、昔NeXTという素晴らしいワークステーションに惚れたことから始まる。あの時、僕は「技術の美しさ」を知った。僕は、まだ小さい息子のミルク代を奪ってNeXTコンピューターを買った(と今でも妻は言う)。安月給なのに周辺機器を入れると300万円も叩いた。NeXusという名のNeXTユーザー会に入り、Objective Cという開発言語を手取り足取り試行錯誤で学んだ。幾つかのアプリケーションも作った。
当時はObjective Cは非常に稀な開発言語で、日本でそれを使える人はキャノンの内部を入れても100人いなかったと思う。かなり使えるデバッガーのビジュアルフロントエンドと、文章中の数式(数学的に正しい数式であればどんな数式でも)を計算してくれる電卓と、英和辞書のフロントエンドを作った。いずれも当時の市販品のどれよりも優れていて、自分でもプログラムの才能があるんじゃないかと思ったりしたが、そのうちにNeXTは死に、NeXusの活動も停止した。
話が飛んだが、Mac もiPhoneも、そのNeXTの技術を使っていて、開発言語はObjective C。
だからiPhone に惚れたわけ。ちょっと変わった惚れ方だと思う。
iPhoneを買って、何かアプリを作って一儲けしようと思い、開発のために久々にMacを買った。Xcodeには僕が作ったデバッガーのフロントエンドより優れたものが載っていてびっくりした(当たり前か)。アプリを売って5000万円設けたら会社を辞めようと思って頑張ったが、結局5万円しか売れなかった。ものすごい勢いで良いアプリが出てきて、僕の作品は埋もれ、誰の目にも留まらなくなった。
また話が脱線したが、そんな大好きなiPhone の電池が2時間しか持たなくなったので、iPhone 6 plus に乗り換えようと思って、帰国した際にヨドバシカメラに行ってみたら、驚いたことにSIMフリーのiPhone 6 plusがソフトバンク等のキャリアーからは売ってなかった!
総務省からSIMロックの禁止通達が出ていたので、売っているはずと勝手に思っていたのだが、なかった。ソフトバンクの販売員にSIMフリーを売ってない理由を聞いたら、「未だ社長が首を立てに振ってないから」という。でも5月からは外さざるを得なくなるだろうとも言っていた。
売ってないなら自分でSIMアンロックするか、MBKとかでお金を払ってアンロックすればいいのかもしれないが、アップルやソフトバンクの態度からして、いろんな障害が出そうな気がした。
それで、僕はiPhone とはお別れすることにした。
選んだのは、NeXus 6。
なぜなら、前述のように名前がいいから。
(ちなみに、NeXusというユーザー会が出来た時、すでにNeXusという商標は複数存在したが、ただのユーザー会の名前なので問題にはならなかった。Googleが商品にNeXusを日本で出したときにどうしたのかは知らないが、もしNeXusユーザー会があったら文句をつけてお金を取ってやることも出来たかもと今になって思ったりする。)
NeXus 6は、画面は物理的にも解像度的にもiPhone 6 plusよりも大きく、かなり大きすぎる感があるが、マシンのスペックは優位。
他の利点(惚れた点)は、NeXusという名前の他に、Googleの最新の純正Android 5が使えること。それとSIMフリーであること。
僕にとっての欠点は、これまでのiCloudに蓄積されたいろんな情報を乗り換えるのが面倒なことと、指紋認証がないこと(いちいちパスコードを入れるのはかなり面倒だし、横からコードパターンを見られるリスクが高い。パターンはかなり視覚的に覚えやすい。)。乗り換えでデータを完璧に移転することは出来ないかもしれないリスクもある(実際、現時点でまだ30%くらいしか移転できていない)。それと、アンドロイドの世界は不正アプリにより何されるか分からないという不安がアップル帝国の場合よりも大きいこと。(グーグルにだけはグーグル帝国になって欲しくない。なったら大変なことになる。)
SIMフリーのiPhoneやNeXusを買うだけなら、タイのMBKで買えばいいのだが、なぜわざわざ日本で買ったのかというと、理由はただひとつ。それは、金利なしの24分割払いがあったから。それだけ。64GB版だと、iPhoneやNeXusも10万近い値段になって、今の僕には一括払いする勇気がなかったからだ。
iTuneのような母艦がないモバイルって、僕にとっては未だ違和感があるが、母艦はGoogleのサーバーと思えばいいのかもしれない。
グーグルの活動が停止したら、預けた僕の脳の機能はどうなってしまうのだろう。
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