天空の民 いちご畑
マシュマロちゃんはモン族の女だ。
モン族の村には、数年前に2度ほど行ったことがある。いずれも昔ながらの生活をしていたが、一部の女達が観光客目当ての衣裳を着て、お土産を売っている村もあった。
マシュマロちゃんは、ここに書けない理由によって、就職した会社をわずか3ヶ月で辞めさせられ、実家に呼び戻された。
直接的な理由は、モン族の祈祷師が、マシュマロちゃんには不運と危険が付き纏っているので、誕生日が過ぎて年が明けるまで、田舎で暮らしたほうがいいと占ったからだ。バンコクで4年間都会の暮らしを経験し、大学で科学を学んでも、モンの祈祷師の言うことは絶体で、誰も逆らうことが出来ない。強制的に呼び戻されたわけだが、彼女自身も祈祷師の言葉を信じ、恐れていたようだ。
大学でバイオテクノロジーを学び、細菌試験を行う会社に勤めだした彼女は、こうして天空の民に戻り、無報酬の農作業に明け暮れる生活になってしまった。
元々モン族は中国の雲南省辺りで暮らしていた民族である。日本の文化の多くも、同じ雲南省辺りを起源としているので、モン族と日本人は文化的に似た部分が多い。農耕民族で照葉樹林帯に起源しているので「日本の農耕文化のルーツ」の民族とも言われている。人種的にも、丸っぽくずんぐりした体型で、手足は短く、一般のタイ人よりも日本人に似ている。
モン族は、漢民族に支配されることを嫌い、漢民族の迫害を受けて中国からベトナムやラオスを南下し、その移動途中で不便な山谷(即ち安全な場所)に分派して彼らの村を作りながら、タイには19世紀に移り住んだと言われる。 定住の地を持たず、他民族に追われ、戦火に巻き込まれ、安住の地を求めて移動を繰り返して来た民族である。 タイやラオスでは「メーオ」とも呼ばれる。
そのマシュマロちゃんから、山の暮らしの写真が何度か届いた。
彼女の村も、文字通り山の頂上付近に張り付くように家が寄り添っている。迫害もなくなった現在、どうしてこんな山の上に住み続けるのかよく分からないが、彼らは頑なに自分たちの文化を守り続けている。
彼女が幼少の頃は、この辺りはまだケシの栽培が盛んに行われていて、村の収入源は阿片がほとんどだった。今はケシの花は何処にもないが、子供の頃にはたくさんあったのを覚えているそうだ。男たちは、彼女のお父さんも含めて、皆阿片を吸っていた。何処から手に入れるのか知らないが、年配の男たちは今でも時々阿片を吸うのだそうだ。
モン族にかぎらず、山岳民族の多くは、かつて阿片を生産していて、その後、政府やボランティア団体の援助で、コーヒー(アラビカ種)やお茶、イチゴ園等に変わっていったようだ。
山の上の彼女の村。標高は1200程度。遠く南に、有名なドイ・インタノンが見える。
その村には、チェンマイ市内から4輪駆動のピックアップトラックで3時間半かかる。グーグル・マップ以外には地図にもない悪路を奔ってゆかなければ着かないので、今もなお陸の孤島のようだ。ガイドなしで初めて訪れて、辿り着けるような場所ではない。
村は雲の中にある。
食事の用意。トムヤムらしいが、具が見えない。電気やガスもあるが、薪や炭が多く使われる。
彼女の家。15年前に建てた。ゴキブリは寒いから、いないらしい。
衛星放送のTVはあるので、バンコクと同じ情報はちゃんと伝わってくる。
カウニャウとココナッツとバナナでお菓子を作っているところ。
彼女の村は、今ではイチゴの栽培で生活している。これは新しく開梱したいちご畑。
ちなみに、イチゴ栽培は日本人が苦労して技術移転した。
イチゴ自体は、チェンマイで品種改良されたものらしい。日本の株では病気が出て育たない。
いちご畑。温室ではなく、全部露地だ。標高が高く、朝夕はグッと気温が下がるので、イチゴ栽培に向いている。
イチゴの株から出たシュートを拾って、発根させているところ。こうして増やした株を別の畑に移植する。
彼女のお兄さんは、これをカオヤイに持って行って、観光農園を始めることを計画している。
ウジャウジャ増える。
大きな葉っぱでカバーした苗床に新しい株を移植する。
竹ひごから全部手作り。
こちらはビニールを利用している。
山の空気はフレッシュで冷たく湿っている。
カメムシ
変わった形のクモ
バラ科と思われる高木にいたカミキリムシ。
彼女が写したベニモンアゲハ。この紅色の紋はモン族の衣裳の紅と似ている。
彼女の村の衣裳はこんな感じ。
モンのモチーフ。
琉球やアイヌの文様と似たところがあるような気がする。
何の実かな?
この土日に、特別な理由のために、家族の許可を得て、彼女は僕のところに来た。
カオヤイの観光農園でお花畑を作りたいと言うので、チャトチャックで11月から3月頃に咲きそうな花の種を買ってあげた。
ついでに、グッチの財布のなんちゃってものを、550Bから250Bまで値切って買ってあげた。
今朝、バスで帰った彼女は、今頃ちょうどチェンマイに着いた頃である。
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Topic : タイ・バンコク
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