ブンバンファイ探訪記

ブンバンファイってご存知だろうか?

僕は半年前まで全く知らなかった。このブログの最強の読者から教えてもらうまでは。

その読者が、今年のブンバンファイのレポートを送ってくれた。

ただ観光で見に行っただけではない。なんと、自分のロケットまで打ち上げていた。

 

知ってる人でも、多分こういう写真や映像は見たことがないのではないだろうか?

タイ人に聞いても、「名前は知っているけど、見たことはない」という人が多い。

それは、戦術ミサイルと間違えられそうなロケット大会だった。

以下、そのレポートをそのまま掲載する。

 

ブンバンファイ探訪記

 

1

ブンバンファイ会場全景(2013)


昨年に続き今年も5月のブンバンファイに合わせて妻の里に帰省した。妻の実家はウドンタニ県のペーン郡。イサーン地方の典型的な貧しい田舎の村落にある。この時期、炎天下の気温は40度以上になり精気を奪う。そんな貧しく過酷な自然環境であっても、郷愁を誘い心和むところでもある。


この地のブンバンファイに興味を持たれた読者のために詳しく説明すると、ウドンタニ県ペーン郡バーンタート区で昔から毎年開催されているブンバンファイの探訪記である。

話しがややこしくなるが、ウドンタニ県では他地域でもブンバンファイが行われており、同じペーン郡でも別のものがあるので紛らわしい。しかし他のものは大した規模ではないとのことなのでご注意頂きたい。


会場は実家から程近い湖(溜め池と思われる)の湖畔である。発射場近くでは露店が並び、特設の歌謡ステージや蛇の見世物などもあり祭り気分を盛り上げる。


◇ブンバンファイ บุญบั้งไฟ とは


ブンバンファイとはロケット祭りと言われるように、手作りのロケット花火を打ち上げる祭りのことである。ロケットの大きさは年々巨大化が競われる傾向にあるようだ。タイのロケット祭りとしては、ヤソトーン県のものが観光誘致のために力が入れられて有名になり、以前から知ってはいたが、実際の迫力は想像以上のものであった。この地のブンバンファイはヤソトーン県のものに勝るとも劣らず、タイでは三本の指に入る規模だとのことである。

2

セーン(10万)級のロケット発射(2013)


冨田竹二郎先生の『タイ日大辞典』で調べると、最初はうまく見つけられなかったが、よく調べると「竹筒」を意味するバンบั้ง はボン บ้อง と同義語ということが分かった。この辞書ではボンファイ บ้องไฟ で解説されていた。ちなみに語頭のブン บุญ は、当ブログ読者ならご存じの方も多いと思うが、よく使うタムブン(「得を積む」から転じて日本人がタイ女性にお金を捧げることを揶揄してそう言う方がいる)のブンで、善行のこと。直訳すれば竹筒で作ったロケットを打ち上げる善行。


以下、『タイ日大辞典 冨田竹二郎編』の解説を引用

北タイ、東北タイ、ラオス、雲南、広西のタイ族が打ち上げて興じる長い竹筒で作ったロケットでบั้งไฟともいう。昔はกรวด,จรวดと称した。東北タイではこの打ち上げ行事をงานบุญบั้งไฟと称し陰暦6月に行うが、先ずสลากใบบุญ(奉賀帳)を回して資金を集め、寺の境内で組み立てる。準備ができると三日にわたって歌い踊り(เซิ้งบ้องไฟという)、セン太鼓(กลองเส็ง)の村対抗打などが行われる。各村ではこのロケットを飾り立てて行列を作って村内を練り歩き、大樹を発射台にして打ち上げる。直昇し滞空時間の長いロケットを打ち上げた地区又は村が優勝となる。そのため火薬の配合や詰め方は各自が極秘にしている。


残念ながら、いつ頃から始まったものか解説がなかったので歴史的経緯は分からないが、かなり古くから行われていた行事だと思われる。

 

3

  木を利用した昔の発射台が残っていた(2014)


◇村対抗パレード


昨年は5月24日が祭りの幕開けの村対抗パレード、その翌日から数日に渡ってロケット打ち上げが行われたのだが、今年(2014)は旧暦の違いから5月13日であった。タイではその日がヴィサカブーチャ(仏誕節)の祝日であり、この地方ではそれが幕開け日のようである。


村対抗パレードは、各村が仕立てた山車と踊りのチームに自由参加の村人達も加わり、ロケット発射場から終点のお寺までの2㎞ほどの道程を大音響の音楽と踊りで練り歩く。途中に審査員席があって、そこで速度が落ちるので終点に辿り着くまでにかなりの時間を要することになる。


昨年は親戚一同で村のパレードに参加したが、炎天下の中スタートまで延々と待たされ、スタートしても既に酔っぱらった村人達が酒を飲ませ合ったり、泥を擦り付けたりして、陽気だが危なっかしくもある。そんな苦行だったので、今年は参加せずに親戚達と終点近くで眺めるのみにした。


※掲載した写真の多くは昨年のものである。今年は2回目の怠惰からあまり良い写真が撮れなかった。(写真に撮影年を記した)

 

4

発射場の広場で出発を待つパレードの山車(2013)


5 

村の踊り隊(2013)

 

6

 各村の山車(2013)

 

7 ロケットをあしらった山車(2014)

 

8 

各村の山車(2014)

 

10

各村の山車(2014)



今年の村対抗パレードでは、なんと実家の村が総合優勝を果たした。

残念ながらそれを見る前にくたびれて引き上げたのだが、その直後に大スコールに襲われた。残っていればカメラ諸共ずぶ濡れのところであった。落雷で停電になり、あっという間に実家の前の道が冠水した。暫くしてパレードに参加していた家族達が濡れ鼠で帰って来た。

 

11

実家の前の道がたちまち冠水、天井からは雨漏り(2014)

 

 

◇ブンバンファイの慣わし


この地では村対抗パレードの翌朝からロケットの打ち上げが始まる。先ず初日は祭事に奉納された各種サイズのロケットが順々に打ち上げられ、それが延々日暮れまで続く。最大の見せ場はその年の最大級(ラーン級)の打ち上げである。その前になると小さなロケットを連射して雰囲気を盛り上げる。多くの見物客もこれを見るのを毎年楽しみにしているようだ。


2日目は規定サイズ(ムーン級)での競技会となる。個人や団体で自慢のロケットを持ち寄って滞空時間を競い合う。


3日目以降はまだ残っているロケットを打ち尽くすまで続けるそうだが、昨年も今年も2日目の夜にバンコクへ旅立ったので3日目以降の実際の様子は知らない。1日に数百発は打ち上げられるので期間中の総数は相当なものだ。


前述したがこの地のブンバンファイはタイでも規模が大きいので、他県からわざわざロケットを持って来て参加する人が増えたとのことである。昨年の最大級も地元民のではなく他県の名士のものであったようだ。


ロケットの奉納と書いたが、その言い方で正しいかどうか自信が無い。私のために昨年も今年もロケットを作って貰ったのだが、打ち上げ前にそのロケットを持ってお寺にお参りし、ロケットに祈りを捧げることから、やはり神事への奉納ということだと思った。

 

12

お参りする私のロケット(2013)

 

13

仏塔と糸で繋いで祈りを捧げる (2013)

 

14

今年のロケット (2014)


◇ロケットについて


子供が遊びで打ち上げる小さなものから昨年私が作ってもらった火薬が12㎏以下のものは特に呼び名はないようであったが、会場で打ち上げるサイズには共通の呼び名が付けられている。


ちなみに昨年作ってもらったロケットを見たとき予想以上に大きくて驚いたが、お参りを終えたら実家の裏で家族の手により簡単に打ち上げられてしまったことにもっと驚いた。ロケットは見事に空高く打ち上がったが、その残骸がどこに落ちるか気が気でなかった。

 

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子供向けの小さなロケット花火があちこちで売られている(2013)

 

16

実家の裏で私のロケットの打ち上げ準備(2013)


・ムーン หมื่น (万の意)並 火薬12㎏以上

・セーン แสน (十万の意)大 火薬120㎏

・ラーン ล้าน (百万の意)特大 火薬120㎏以上

というのが通常の分け方であるようだが、最近はより大きなものが出現し、

・グゥー กือ (千万の意)超特大(不明)

という呼び名で呼ばれる。このグゥー กือという言葉は『タイ日大辞典』になく、妻によるとどうもイサーン語(ラオス語)らしい。


今年(2014)ノンカイ県のブンバンファイで超特大のロケットが発射直後に空中爆発したことがニュースで報じられた。それがタイで最大のものであり、15ラーン=1.5グゥーということであった。

 

17

今年私が奉納したロケット(2014)

 

18

昨年より大きいムーン級、作りも立派だ(2014)


私の昨年のロケットは2,000バーツで、今年はムーン級に格上げして3,000バーツであった。近所の花火師に頼んで作って貰った。ブンバンファイの花形であるセーン級で数万バーツ、目玉のラーン級になると10万バーツを超えると言われる。


今年の私のロケットは私達がバンコクに戻った日に会場に運んで打ち上げられたので残念ながら打ち上げを目にすることは出来なかった。対応してくれた妻の兄から空高く綺麗に飛んだと聞いた。もしまともに飛んでなくても心根の優しい人達なので、きっとそう言うだろうと思う。


◇ロケット発射風景

 

21

ロケット発射台(2013)

 

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ロケット準備完了(2013)

 

23

ロケット発射準備(2013)

 

 

24

ロケット搬出(2013)

 

25

発射台へ(2013)

 

26

点火線の装着(2013)


写真だけでは迫力が伝わりにくいので、昨年の動画も併せてご覧頂きたい。


■最大級(ラーン)のロケット打ち上げ(2013)

http://youtu.be/hHjcnkChLWA


■ 対岸からの全景(2013)

http://youtu.be/Ait2E0v1Rck



■ 発射台間近から(2013)

http://youtu.be/oFvqFKnFdwU

 

■ ロケット発射の噴煙(2013)

http://youtu.be/5DfeS3ly7mY


■ 旋回飛行するロケット(2013)

http://youtu.be/SOWAKYMFf3I


■ 凄まじい噴煙でカメラが…(2013)

http://youtu.be/BrvO2fdoMqY


■ 競技会風景(2013)

http://youtu.be/ZcScMDSHPfU


27競技会の結果集計表(2013)


まだ途中経過であるが、表中のเวลาが滞空時間のようで、見える中では364秒が最高である。これは6分ということになるので相当なものである。



◇ブンバンファイ事故


ブンバンファイは神聖でありながら、かなり危険な行事でもある。毎年どこかの地域で死傷者が発生しているが、事故発生後も継続してロケットは発射されるし、何らかの規制強化が成されたという話しも聞かない。いかにもタイらしい大らかさと言うしかない。


先ず一番身近で確率が高いのが、打ち上がったロケット残骸の落下である。ロケットの中にはミサイルのように鋭角に飛び出し集落の方へ飛んで行くものもあった。数キロ離れた実家の近所に昨年も今年も残骸が落下し、その音を聞いて子供達が真っ先に飛んで行った。


屋根に当たれば突き抜けるし、人にまともに当たれば死ぬであろう。ここらの人達は当たるのも運命と割り切っているのか動じる気配はない。もし当たっても何の補償もないだろうにと心配になる。

 

28

会場で見ていた近くに落ちてきたロケットの残骸(2013)


最も悲惨なのはロケットの暴発・迷走である。とんでもない方向に飛んで行くことがある。かつて聞いた話しでは別の地域のものであるが、ロケットが水平に飛び出して、観客の首をもぎ取ってそのまま飛んで行ったという話しを聞いたことがある。また昨年同じ時期に開催されていたノンカイの会場でもロケットが迷走して、見物客の車に飛び込んで2名が死亡するという事故が発生した。

 


■ ネットで拾ったノンカイの事故映像

https://www.facebook.com/video/video.php?v=361927310575467

そして今年は何と会場の目の前で事故を目撃した。打ち上がったロケットが急に向きを変え発射場近くに落ちてきたのである。地上に激突すると白煙が上がり、人々が騒ぐ姿が対岸から見えた。


後から聞いて分かったのだが、落ちたところに準備中のセーン級のロケットがあり、そいつに引火して地を這って人を巻き込んだという出来すぎた事故であった。死者はなかったようだが複数名が骨折などの怪我をしたと全国放送のCh-3でも報じられた。

 

29

ロケットが地上に激突した直後、白煙が立ちのぼる(2014)


昨年はまさに今回の事故現場付近でウロウロしていたのだが、今年は危険な感じがして近寄らなかったので事故に巻き込まれずに済んだ。


もしブンバンファイを訪ねる機会があれば、そういった事故の可能性を意識し、あまり発射台付近に長居しないことをお勧めし、探訪記の結びとさせて頂きたい。

最後までお付き合い頂いた読者に感謝し、何らかのご参考になれば幸甚です。

 

 

 

 

 

 

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Topic : タイ・バンコク
Genre : ForeignCountries

Comments

ブンバンファイ2015

突然コメント失礼します。
バンコクに住んでいるものです!
ぜひ、今年はブンバンファイに参加したくて、情報を集めていたところ、blog記事を発見しました!
ぜひブンバンファイについて質問を2つさせていただきたいです!よろしくお願いします!

⑴あたしはヤソートーンに行こうと思っていたのですが、ウドンタニ県とヤソートーンはどちらが現地人が盛り上がり、おすすめですか?
⑵土日しか仕事が休めないので、6時くらいの飛行機に乗らなければならないのですが、打ち上げ時間はだいたいどのくらいですか?

ぜひ添付したメールアドレスに返信ください!お願いします!

Re: タイトルなし

> ハムケンさんの会社からも早くグゥー級のロケットを出せるといいですね。
その日を夢見て楽しく頑張っています。きっとその日は来ると思います。

イベント大好きのタイ人らしい行事。

ハムケンさんの会社からも早くグゥー級のロケットを出せるといいですね。

日本では花火がありますが、こちらは美を競うもの。

似て非ざるものですね。
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