イサーンの女

ちょっと町に出かけて飲みたい気分になったので、僕の憩いの場、ソイ・カーボーイに行って、底抜けに明るいコイを探したら、今日は休みだという。田舎に帰ったらしく、一ヶ月くらいしたらまた来るが、それが何日かは分からないとのことだ。今日は誰も知ってる人がいないなと思ったら、髪型が変わったソンが、「あそこから手を振ってたのに分からなかった?」といって隣に座った。

「私の田舎は、ナコンパノン。メコン川の近くだわ。メコン川の他に何にもない。バーもコンビニもスーパーマーケットも何にもない。田んぼと水牛がいるだけ。」というソンに、メコンの火の玉祭りの写真を見せて、知っているかどうか聞いてみた。

1809

「知ってるよ。毎年決まった日に、何カ所から火の玉が空に上がるのよ。いっぱい人が来るわ。」

お寺で生まれた僕は、人玉とお墓のリン光は見たことがあるが、メコンのは遥かに大きく明るい火の玉が空高く上がるので、とても自然現象とは思えない。決まった時期だけに起こるというのも、嘘っぽい。

「それって、自然現象なのか?誰かが、人工的にやってるんじゃないのか?」と聞くと、

「メコン川には大きな竜が住んでいて、その竜が火を吐くのよ」と大まじめだ。

メコンの竜のことは知っている。ノンカイというメコン川沿いの町に行ったときに、川沿いの公園でモニュメントを見た。15mはありそうだった。ウボンラチャタニーのろうそく祭りの山車も竜だ。僕としては、巨大な竜が住んでいるというより、メコン川そのものが竜なんだろうと思う。でもそれだと抽象的すぎて分かりにくいので、分かりやすく巨大な竜が住んでいるという話にしているのではないだろうか。

この国の人は、この手の言い伝えをマジで信じている。仏教がらみの教えもしかり。だから、お寺にタンブン(お布施のようなもの)を喜んでするし、タンブンした後は幸せな気分になるという。女の子は、幼いときから、大きくなったら親の面倒をみるように刷り込まれていて、20歳になると少ない給料でも必ず親にお金を送っている。社会保障制度は、あまり発達していないが、タンブンのシステムが社会保障の重要な一端を担っている。

ソンの場合は、親が貧乏な農家で、田舎の家はとても小さい。家の絵を描いて、

「ここでお父さんとお母さんが寝て、ここで私が寝てた。その下に、水牛が寝てた。」と説明してくれた。田舎の農家の家は、大抵高床式で床下に水牛を飼っている。水牛は昼は田んぼで仕事をして、夜になると床下に連れてこられて寝るのだ。どうして夜間に床下に連れてくるのかというと、そうしないと水牛を盗んで行く悪人がいるからなのだそうだ。

「だから、この仕事をしてお金を貯めて、両親のために家を建てるのが夢」と、ソンは前回と同じ話を繰り返した。

「いくらくらいで家が建つんだ?」聞くと、

「私の田舎なら、500,000THBあれば大丈夫。もし、1,000,000THBあったらすごく大きい家が出来る。」

土地があれば、150万か300万円で広い家は建つが、農家の娘にはそのお金は一生溜まらない。外国人ならそのお金はあるだろうが、不動産は持てない法律になっている。唯一の手段は外国人と結婚することで、だから貧乏なタイ娘は外国人をなんとかして落とそうと躍起だ。中流以上のタイ人は外国人を相手にすることは滅多にない。ちなみに、ソンの家は4ライの土地がある。1ライは1600平方メートルなので、4ライだと5600平方メートルにもなる。日本なら立派なお金持ちだが、タイは大陸であって、平らな土地が果てしなく続いているので、ただの農地はただ同然だ。5600平方メートルの土地に、150万円で家が建って、そこで暮らしてゆけるのなら考えようによっては悪くない。

「それで、あと何年でそのお金がたまると思う?」と聞くと、

「まだこの仕事を初めて2ヶ月だから分からないけど、5年くらいで溜まるといいなあ。」とソンは遠くも見て言った。

Q2281229

NI293790

一ヶ月3500THBのアパートに住み、必要経費以外は全部親に送っているので、仮に月に30,000バーツを得て20,000THB送金できたとすると、3年くらいで目標額に達する計算になる。しかし、計算通り行くことは滅多にない。親が贅沢してお金を使ってしまうか、自分が高級化粧品を使うようになったり、薬物にはまったりして、送金額が減ってしまうのが普通だ。結局、その仕事をしても夢が叶えられることはほとんどない。

相続税がなく、縁故のコネや賄賂が効くこの社会では、富裕層の子は富裕になり、貧乏は世襲する。こうして、階級は固定化してしまうのがこの国の問題点だと思う。タイにいると、貧しい人々の悲しみが分かる気がする。

この点、日本はすばらしい。だれでも、努力すればいい教育が受けられるし、階級は実質的に存在しない文字通り機会均等社会だ。また、日本のような平等な国は滅多にないだろうと思う。

 

 

Related Entries

Topic : タイ
Genre : ForeignCountries

tag : タイ人 夜の街

Comments

Private comment

訪問カウンター

Online

現在の閲覧者数:

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール

ハムケン

Author:ハムケン
サラリーマンはもう飽きた。気がつけば人生の残りも僅か。ここはひとつ、窮屈な日本を抜け出し、活力あるのにどこかゆる~いタイを舞台に、自分らしい第二の人生に旅立つことを決めてしまった50代親父。

カレンダー
08 | 2020/09 | 10
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -
サイト内検索
最新記事
カテゴリ
カテゴリ別記事一覧
月別アーカイブ
最新コメント
RSSリンクの表示
ジャンルランキング
[ジャンルランキング]
海外情報
2位
ジャンルランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
アジア
2位
サブジャンルランキングを見る>>
現在閲覧者数
現在の閲覧者数:
閲覧者数
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる