死への坂道まっしぐら
誰かの死体を運ぶ夢を見た。
誰の死体かは分からないが、やけに重い死体で、僕は力尽きて死体を落とした。
嫌な予感がする。
劇症肝炎になったワーカーの今日の病状は知らないが、もう数日中に彼は死んでしまうと思う。ほとんど確信に近い。
入院して僅か一週間。なんて速い進行なんだ。
彼はもう真黒い尿も全く出なくなった。
脳にも障害が出て(肝性脳症)、訳の分からないことを話す。
今日明日にも肝性昏睡に入るのではないだろうか。
僕は超音波画像は読めないが、胃のあたりから肝臓の下に腫瘍っぽい塊がぶどうのように詰まっていた(ように見えた)。医師も臨床試験士の若い女性も胃にも問題があると言っていた。
彼は胃の辺りが痛くて、男のくせにベッドで泣くてばかりいるらしいが、医師はもう起きなくなるかも知れないから、モルヒネは入れないみたいだ。
頼むから、もうモルヒネかヘロインを入れてあげて欲しい。
本当は今日、彼が移送されたコラートのマハラット病院に見舞いに行くつもりだったが、彼の惨状を見るのが嫌で行くのをやめた。
多分明日行く。行かねばなるまい。
きっと、数日内に大量の血を吐いて死ぬ。僕の父がそうだったから。父は胃がんの転移で胆管が詰まり肝不全で死んだ。
ワーカーの場合、既に肝硬変を担っていたのなら、急速な肝細胞の増殖は望めない。
腎臓も死んだ。
多分、もう助かる見込みはない。
救いは、肝不全で死ぬ時は、先に昏睡状態になるので、痛くも痒くもない(多分)。呼吸が浅くなり、体温が下がり、眠るように死ぬ。苦しくないうちに、すべてが終わる。
彼がここに来て、僅か一ヶ月。
10日前は、吐き気は有ってもあんなに元気だったのに。
どうしてこんなことになってしまったのか。
奇跡でも起こって回復してくれたら、僕も安眠出来るのに。
若干26歳、4歳の子持ち。貯金ゼロ。
せめて奥さんは自分の実家に戻って、人生のリセットが出来ることを祈る。
一ヶ月前の彼。子思いの優しいお父さん。
(訳者注:未だ死んでません。生きて帰って来たら泣いて歓迎します。)