ナマズ
日本では滅多に食べなくなったナマズだが、タイでは魚の代名詞的存在で、僕も週に2回は食べている。
ナマズはどの市(タラート)に行っても必ずいる魚で、上の写真の様に生きたまま売られる。又は、腹を出して匂いを消すためのハーブを詰められ、遠赤外線炭火でじっくり焼かれて直ぐに食べられる状態で売られている。
僕らが買うのはもっぱら後者。40センチ級が美味しく焼かれていて一匹たったの40バーツ。30センチ級なら30バーツ。滅茶安いと思う。
腹に黄色い脂がたっぷり乗っていて美味い。それでいて全く泥臭くない。骨は細くて肉離れ良く、小骨なら噛み砕いて食べられる。
南部の海辺でない限り、タイで魚と言ったら、このナマズかプラニンことティラピアか、オレンジ色のタプティンくらいがメイン。
一方、日本にはもうナマズはあまりいない。
現役時代、つくばや牛久辺りに住んでいた頃、近くにナマズレストランが1~2軒あったが、ナマズ定食が一人前3500円くらいで高かったので、遂に食わず仕舞いで退職してしまった。
そこのナマズがどんなナマズなのか、どれ程美味しいのか知らないが、40バーツ即ち150円と3500円では違い過ぎる。
そこにビジネスチャンスありと思うが、あまり輸出されてないところをみると、何某からの規制があるのだろう、きっと。
それにしても、遠赤外線炭火焼き40センチが40バーツなんて、いったいどうやってナマズを用意しているのか不思議だった。
それが先日分かった。
カオヤイのある地主が、自分の土地でいちご栽培をやりたいと思い、大学を出たばかりの息子にやらせた。息子は育て方が全く分からず、僕らの農園にコンサルを頼みに来た。
彼の農園に行ってみると、いちごは燦々たるもので、処置なしといったところ。
ビニール温室に出来る骨組みの下にいちごはあった。
3月に植えたのに成長してない。
スリップスとダニと雑草でどうしようもない。
僕たちのアドバイスは、
「この時期にこのまま栽培を続けても良い結果は得られないから、この畑は潰して除草し、9月が10月に定植し直した方が良い。苗は欲しければ分けてあげる。」
話が逸れたが、その農園の隣に立派なニワトリの飼育施設があって、鶏卵用の鶏が数千羽飼われていた。
鶏は金網の飼育箱にぎゅうぎゅう詰めに飼われていて、毎日一つずつ卵を産む。
餌を食べて、卵を産んで、ウンチをすること以外許されない。
それで、ウンチは下に落下してコンクリート製の池と言うか下水溝みたいなところに落ちる。
その水は激しい水流で撹拌されていて、赤茶色に濁っていて透明度ゼロ。
「この中にナマズが16000匹居る。」
若者はそう言った。
つまり、鶏のウンチがナマズの餌だった訳だ。
市場に並ぶナマズも基本天然物ではなくて養殖ナマズで、餌は鶏のウンチなのだった。
鶏よりも数倍多いナマズの数だが、餌は栄養満点らしく、どんどん育つ。稚魚を入れてから2~3ヶ月で出荷可能らしい。
そういう訳で、見たら食べたくなくなりそうな光景だが、食べてみれば臭くもなく美味しいのだった。