還暦の誕生日
何も考えず、ただ風に揺れる木の葉や流れる雲を見ていた。
鳥達が飛ぶのを目で追いかけ、野の花を想う。聴こえてくるのは、鳥の声と風の音だけ。
プールで泳いで濡れたままの身体をソファーのブランコに横たえて、涼しい風が心地良かった。
こんな風に身も心もリラックスした時を過ごすのは久しぶりだった。
4日は僕の還暦の誕生日ということで、マシュマロちゃんがカオヤイのリゾートホテルを予約してくれた。
「今日明日は何にも考えずにゆっくりしてね。」
その言葉通りに、何も考えないことにした。朝から彼女に連れられれるまま、ラムタコーンのカフェで朝食を摂った。そのカフェは同じラムタコーンとは思えないほどの清流で感激したので、別の機会に紹介したい。
誕生日の日に泊まったホテルは、Sala Resort Khaoyai という。カオヤイ農園とワンナムキアオのマシュマロいちご園の中間地点にある。ゆったりとした丘陵地帯の一番高い丘の上にあって(標高585メートル)、周りには民家が全くない。風が涼しい。
丘の上に大きなプールとレストランがあって、その周りにプール付きのビラが4棟あるのみ。各ビラは他から見えずプライバシーは抜群。
僕らが利用したビラはこれ。屋上に夕暮れや夜に寛ぐソファーがある。昼は日陰が無いので暑くて居られない。この時は、にわか雨の後だったので、カバーが付けられていた。
こちらが正面側。前には何もなく、裸で居ても誰にも見られない。小さなプライベートプールが有難かった。
顔がタイ人より真っ黒で嫌になる。
部屋の中は白基調。曲線が多く角が無い作り。
やけに広くて、この部屋は138平米とのこと。プライベートプールもあるし、高そうだったので、
「このホテル高かったんじゃない? 4000バーツ位したんじゃない?」
と聞いたら、マシュマロちゃんは、直ぐには答えなかったが、朝食付きで7800バーツだったと後で教えてくれた。7800と言ったら、タイじゃちょっと凄いぞ。何しろ、税込みで3万円だよ。何も考えるなと言っても、貧乏人はお金が気になるじゃないか。
「一年に一回だけの日なんだから、高くないわ。私、時間をかけていろいろ探したけど、ここならゆっくりリラックス出来ると思って選んだの。気に入ったでしょ? 何も気にせずゆっくり休んでね。」
プライバシー重視のリゾートホテルだけあって、お客さんは、レズビアンのカップル、中年とミヤノイのカップルがいた。他はシンガポールからの観光客と僕ら。タイのリゾートホテルでコンドームがアメニティーにあるのを見たのは初めてだった。
ライラックとクチナシのようなうっとりする香りがホテル中に香っていた。このホテルのオーナーは、植栽には拘っているのが分かる。小鳥もこれらの木が大好きで、沢山寄ってきて美しい声で鳴く。
「私達の庭にも、綺麗で香りが良くて、小鳥が好きな蜜や実がなる木を植えましょうね。」とマシュマロちゃん。
やっとのことで水から上がった彼らが、やがて大空を飛び回るようになるなんて、誰が想像出来ただろうか。
真っ赤な夕焼け。イサーンの夕焼けは何時も美しい。
これはメコン大ナマズではなかっただろうか?
夕食のお値段はまあこんなところかな。他にレストランはないし、わざわざ遠くの安くて不味いローカルレストランに出掛けることもないので、ここでじっくり味わいましょ。
本当に何も考えずに一日を過ごした。
シアリスを仕込んだのに、息子も主人もその日はぐっすり夢の中。
で、
アーサー!
日の出。
それから二度寝。起き上がったのは8時半。
いろんなコーヒーを飲んだけど、ここのコーヒーはいまいち。僕らのお店のコーヒーの方が断然美味いでヤンス。
多分、この日だけで1.5kgは肥った。
マシュマロちゃん、ありがとう! とっても素敵な誕生日だったよ。脱世間で静かに過ごすには最高のリゾートだと思う。
還暦の身で、美人じゃないけど心優しい年若き女性から愛されるなんて、それだけでセカンドライフはハッピーなんだろう。
日本なら、会社首になって、警察に逮捕されて、一家離散ものかも。自由度が低く、がんじがらめで無表情の日本よ、さようなら。
自由で自然でおおらかで明日のことなんか考えないタイよ。ありがとう。