炭粉末の効果
日本の会社を定年退職して、退職金でタイで炭を作る会社を興した人がいる。
前職で炭をやっていた訳でもなく、タイに関係者がいた訳でもなく、誰からも出資を受けずに退職金だけで始めたところに親近感を覚えた。
炭と言っても、活性炭末に近く、燃やすのではなくて、土壌改良剤として使う。多孔質なので表面に有用菌が繁殖しやすく、それにより土壌改良されるらしい。
炭の値段は10キロ入りで350バーツだったと思う。
炭微粉末の効果については、まるで魔法の様に凄い効果を謳う所もあるが、彼は真面目でちゃんとしたデーターを取りたいというので、共同研究することにした。得られたデーターはその後のマーケティングに使ってもらう。その代わり、購入量の50%分を無料で割増してもらった。
僕らのいちご園は、いちご狩りが主体で、お客さんが随時いちごを採っていくので、収量を比較するのは難しい。
そこで、新たに買った糖度計で糖度を測って比較することにした。
生育や収量、大きさなどは、肉眼で見て、もしも差がありそうだったら、写真を撮って比較するに留めた。
ココナッツを入れたプラスチックポットに炭を入れたものと入れないものを用意し、その他は全て同一条件とした。
場所による差が出ないように、畝ごとに炭を入れた畝と入れない畝を交互に配置した。
炭の効果を上げるために、二種類のEM菌液をすべてのいちごポットに入れた。
加えた炭の量は、体積比で培地の2%。培地はココナッツ片と発酵済み豚糞(一部牛糞)のみで、土は一切使ってない。
なので、炭の効果は出やすい気がしたが、一方でココナッツが十分多孔質なので差が出にくい可能性もあった。
炭と苗を仕込んだ直後の様子
途中結果は、
苗の生育速度、苗の大きさ、葉の色、開花時期、いちごの実の大きさ、量、その他いちご苗の見た目に差は全く見受けられなかった。
では、糖度はどうか?
以下にこれまでの測定結果を平均値と標準偏差値で示す。
① 11月28日
炭あり 13.1 ± 0.54
炭なし 12.7 ± 0.35
有意差なし
② 12月11日
炭あり 15.2 ± 0.78
炭なし 14.0 ± 1.46
有意差なし
③ 12月13日
炭あり 11.8 ± 1.41
炭なし 13.4 ± 1.88
有意差なし
④ 1月12日
炭あり 11.5 ± 3.9
炭なし 10.9 ± 2.7
有意差なし
⑤ 1月25日
炭あり 14.1 ± 1.55
炭なし 13.1 ± 1.85
有意差なし
参考データー
1月25日 マシュマロいちご園
炭なし 13.6 ± 1.66
平均値で炭有りが甘い傾向はあるが、有意差は出ていない。
このテストを後数回やってみるつもりだ。
ところで、糖度の推移を見ると、第一波に高く、その後低くなり第二波でまた高くなるようだ。
糖度が13度以上あれば誰もが甘いと感じる。15度あれば、いちごとしては最高に甘い部類になる。
以下に品種ごとの糖度を示した。
スーパージャンボ 糖度15~18度
クィーンベリー 糖度13度
アスカルビー 糖度12~15度
アイベリー 糖度12~14度
とよのか 糖度12~15度
さがほのか 糖度11.5度
紅ほっぺ 糖度11~13度
あまおう 糖度11度以上
ジャンボイチゴ(まんぷく2号) 糖度10~12度
あかねっ娘(ももいちご) 糖度9~15度
章姫 糖度10~15度
さちのか 糖度10~15度
とちおとめ 糖度9~15度
宝交早生 糖度9~13度
サマーベリー 平均糖度8.6度
めぐみ 糖度8~11度
女峰(にょほう) 糖度8~10度
ふさの香 糖度8~10度
サマープリンセス 糖度7~11度
時期や栽培条件で糖度は大きく変わるので、比較は難しいが、僕らのいちごは日本の銘品と比較しても、まあまあの線を行っている。
後三週間後には、糖度15度超えを目指す。