雲黒斎との格闘2017
今年も元肥として豚の糞(キームー)を使うため、数日前に日雇い労働者の男二人を連れて2台の車で養豚場に行った。
しかし、ウン悪く、大手の買い付けがあって、豚の糞は完売していた。片道1時間半が徒労に終わった。タイ人はどうしてアポイントを取ってから行動しないのか不思議だ。
でもこれは、ほんの序奏だった。
男二人のうちの一人は、ブログにも書いた通り僕の手足として使う近所の男で、僕の言うことはちゃんとやるので気に入っていた。
空振りに終わった帰り道、男二人を載せたマシュマロちゃんの車が珍しく検問で引っかかった。後ろを走っていた僕はもちろんパス。警察は人相を見ているらしい。
警察は男二人に尿検査をさせた。麻薬覚醒剤のチェックだ。
僕は先にマシュマロいちご園に戻ったが、マシュマロちゃんがなかなか帰ってこない。一時間も遅れて帰ってきた時は、
「尿検査で遅くなっちゃった。」と言っただけで、何事もなかったかのように仕事を再開した。
しかし、後日驚くべき事実を知った。
僕の手足の男が、予想に反して尿検査で引っかかったのだった。
検出されたのは、ヤーバー。馬が馬鹿になる薬。疲労がポンと取れるヒロポンことメチルアンフェタミンとカフェインの合剤。タイで蔓延する覚醒剤である。最近では欧米でも人気があるらしい。
尿検査で引っかかると、運命は2つに分かれる。
貧乏人はそのまま留置、起訴。初犯なら罰金で済むこともあるが、普通は監獄行き。
お金持ちは、警察に賄賂を握らせて見逃してもらう。但し、多量の薬を持っていたり、売人と疑われたら、賄賂は通用せず何年か出て来れない。
上記の賄賂は、相場が15000バーツ。
無論その男が払える額ではない。
マシュマロちゃんはたまたまの雇い主。関係ないと言って見捨てることも出来たが、助けて貰えなかったという逆恨みで、後で彼から怖い目に合うのを恐れた。なにしろ隣近所なのだ。
それと、折角見つけた僕の手足がなくなるのは可哀想と思ったらしい。
その時彼女の財布には、豚糞の購入用に9000バーツが入っていた。彼女はこれだけしかないけど見逃して欲しいと懇願したところ受け入れられ、一時間で帰って来られたというわけだった。
9000バーツと言えば、その男のほぼ一ヶ月分の賃金になる。まだ2週間しか働いていないので、これまでに払った給金の倍程を払ったことになる。
では、これから一ヶ月間タダ働きしてもらうかといえば、そんなことするわけない。その日生きてゆく分を日払いで貰っている日雇い労働者には無理な話だ。
では、9000バーツをタダで進呈するのかと言えば、それもないだろう。そこまでする義理はない。
では、どうするか? 毎月、1000バーツずつでも返済してもらうか? 日給から100バーツを差し引いて払うか?
マシュマロちゃんが言うには、もし彼が僕の車に乗っていたら、警察は15000バーツよりもずっと大きなお金を要求しただろうという。不幸中の幸いだ。
それにしても、どうしてこう薬中ばかりなのか?
薬物乱用者には以前懲りていて、そういう人は絶対雇わないと決めていた。彼を雇う時、僕はクスリをやっていなことを条件にして、やっていなことを口頭で確認したのに、嘘だった訳だ。
マシュマロちゃんは、もし僕が知ったら激怒して、則クビにするだろうから秘密にしておくことにしたらしい。
しかし、知ってしまった以上、僕は彼を解雇し、9000バーツと手足を捨てるのか、うまく彼を使ってしっかり働いて貰うのかの判断を迫られている。
心の中ではもう決めている。そういう人とは縁を切った方が良い。僕の経験から、そういう人たちに優しくしても、彼らが恩を感じることはなく、寧ろつけあがるだけ。仮に恩義を感じたとしても、お金に困っている時に、目の前にお金やお金になるものがあれば、自制心が効かずに手を出してしまう。結果として、恩を仇で返されるのが落ちだ。
労働者は何としても確保しないといけないが、クスリをやってない人をどうやって見つけるのか? ヤーバーやマリファナを一度もやってない日雇い労働者を見たことがない。女は余りやらないが旦那がやっていれば多分妻もやっている。
数日後、豚糞の準備が出来たと養豚場から連絡を受け、日雇い労働者の元締めババアに、
「明日、養豚場に行って豚糞を取りに行くから、頑強な男二人を用意して! 検問があるから、クスリやってる人はダメ。」
と言ったら、翌朝電話がかかってきて、
「誰も用意出来なかった。該当者なし。」との返事。
クスリやってない人はいないのか!
全くホープレスの奴らはろくなもんじゃない。ヤーバーの値段は日雇い日給とほぼ同じ。クスリを止めない限り、永久にホープレスだ。
その日は誰も来なかったので、仕方なく僕とマシュマロちゃんだけで養豚場に向かった。しかし、文字通り糞重い豚糞を2トン余りも車に載せる体力はないし、発酵済みとは言え、眼や鼻や口に豚糞の微粉末を大量に入れたくないので、気が進まないまま行くだけ行ってみたら、養豚場の労働者が全部車に載せてくれて、僕たちは筋肉痛と感染症から免れることが出来た。
去年はここに豚糞の袋が山積みだった。
D-Max車の前輪が雨で泥濘んだ豚糞に埋まって出られなくなった。
豚糞を載せてくれた労働者夫婦と、若いカンボジア人の助けを受けて、1時間以上かかって何とか抜け出せた。もうほんとにうんざりである。
積み込みよりも、前輪脱出の方が時間がかかった。
豚糞は香ばしく出来上がっている。これが唯一の有機肥料。あとは水耕栽培用の化学肥料のみとなるので、重要な元肥である。
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