ワンコの足跡
ワンナムキアオのマシュマロいちご園に建てた新しいショップの土間、つまりはそこが売り場になるのだが、そこにコンクリートを打った。
「どうしてコンクリートを敷く必要があるのか?」とマシュマロちゃんからも、モン族の住込み労働者からも問われた。
「どうもこうもないだろ。土の上じゃ土埃をいくら掃いたって、いつまで経ってもきれいにならないだろう? それに土の上になんかに、冷蔵庫や冷凍庫が置けないだろう!」
どうも常識が違い過ぎていけない。
確かに畑とショップを行ったり来たりする度に、靴を履いたり脱いだり出来ないので、コンクリートを打ったとしても泥が着いた土足で上がることになる。だけど、時々箒で掃けばきれいに土埃は取れるし、水で洗い流すことだって出来る。土のままじゃ、水で洗い流そうものなら、余計状況が悪くなる。
それにテーブルや椅子を置く場合でも、下が平らじゃなきゃ、話にならない。
特に今回は、アイスクリームを売るため、専用のフリーザーを借りることになっているのだが、貸す方としても土の上に置かれたんじゃ嫌だろうと思った。
ともかく、言葉の通じない奴らにいちいち説明するのも億劫なので、
「どうしてもそうしたいと思うから、そうするんだ。」
ということで決着している。
コンクリートを敷いたのは、約18平方メートル。土地を返す時に撤去し易いように、敢えて基礎の砂利は敷かず、鉄筋も入れず、硬い土の上に暑さ4~5センチに押さえてコンクリートを張った。コンクリートを練るのは腰を使うので重労働。交代で行ったが、皆翌朝腰が痛かった。
コンクリートはセメントの割に砂の量を多くし、施工後にトロを流して表面を滑らかにした。
途中、セメントが足りなくなって、違うブランドのセメントを買ったら、色が結構違ってたのは愛嬌?
作業中、住込み労働者のガキンチョに「絶対中に入るな」と強く言い聞かせたので、完成時には足跡一つない美しい土間が出来上がった。
しかし、世の中そうは問屋が卸さない。
翌朝、土間を見てみたら、しっかりとフットプリントが付いているではないか!
しかも、もう固まって修復困難。
トロを流した割に表面が真っ平らでないのは、ズバリ素人だから。
犯人は言わずと知れたこのワンコ。
ワンコには中に入っちゃいけないなんて全く理解の外。
そう言えば、タイのコンクリート土間には(プロが施工したものでも)、必ずと言って良いほどワンコの足跡がある。
この国は人もイサラ(自由)なら、ワンコもイサラ。鎖に繋がれたワンコなど居ない。
だから、日本の職人芸のような土間は作れない。