忠誠
世の中、少しでも偉くなると、部下に忠誠を求める輩が多い。
それが国家の長だろうが、一企業の課長だろうが、同じことだ。
大したことない組織の、たとえば一企業の研究開発部門の長であって、自分も上に忠誠を誓ったような奴でさえ、部下に忠誠を求める人がいる。
忠誠を求めるとは、言い換えればイエスマンになれと言うことだ。自分のやりたいように(多くの場合、自分の上に気に入られるように)物事を進める為には、いちいち文句や反対意見を云う部下は邪魔以外の何者でもない。
僕自身も前に書いたように、「つべこべ言わずに黙って言う通りにやれ!」
と言いたくなるタイプだが、部下に忠誠を誓わせる輩は大嫌いだ。
そう言いたくなる気持ちは分かるが、実際に部下に忠誠を迫る輩は、僕のファーストライフの天敵だったからだ。
何故なら、僕は絶対に(たとえ尊敬出来る人格者であっても)忠誠を誓うことなどしたくなかったから。
忠誠を誓えば、恩恵として将来の安泰が約束される。
誓わなければ、お前は俺の閥じゃないとの太鼓判を押されて、日々イジメに会うか、そのうち何処かに飛ばされる運命だと他人から噂される運命が待っているだけだ。
だから、自分の理念よりも自分の地位や愛する家庭を守りたい優しい男達は、自分を圧し殺して忠誠を誓う。
そのうちにイエスマンの巨塔が出来上がって、忠誠を誓った者達だけが生き残り、拒否した人達が消え去って行く組織が出来上がる。
こうなると、君主に忠誠を誓うかどうかを監視する圧力がますます強まり、君主じゃなくて部下までもが、誓わない奴をこれみよがしに廃除する社会(組織)が出来上がる。
君主にとっては、周りには忠誠を誓った者達だけになるので、物事を自分の思うままに勧めやすくなる(と感じる)。
しかし、僕の経験からも、人類の歴史からも証明されているように、そういう組織は何処か間違った方向に進み出し、それが止まららくなって、ある日突然、組織ごと消え去る運命にある。
一国の主ならともかく、どうして一私企業の一部門長如きでも、そうなってしまうのか? 僕はそれが解せなかった。
多くの先輩や上長が、その罠にハマって消えていった。
忠誠を誓ったぼんくらちゃんの下で働くほど悲しいことはない。
僕のファーストライフは、その悲しみで満ちていたとも言える。
だから僕は、他人に忠誠を求めることはしたくないし、そのような閥を作りたいとは思わない。
だから僕は、ファーストライフの経験や関係を切って、セカンドライフでは全く違う世界に飛び込み、一人自分の思うように生きようとしているのかも知れない。
今の僕は、マシュマロちゃんという相棒ですらコントロール出来ない無力な男だが、それでも昔よりは人生楽しく生きていられる。いろいろと辛いこともあるが、総じて生き甲斐を感じながら生きていられる。
ある超大国の長は、誰にでも忠誠を求めるのだそうだ。
忠誠を求められた元FRB長官は、何も返答しなかったと言う。
録音テープが出て来なかったのは、彼の不運としか言いようがない。
そんな長に対して、スカーボロ氏は、
「無様な間抜け」で「ズボンの中にうんこをもらした子供」
みたいだと呼んた。
ブレジンスキー氏は政権関係者を「ロボトミー手術を受けたみたい」と嘲笑していた。
全くその通りだと思う。
その国は先進国だから、どうなっても多分復活するだろうから良いが、体制維持の為には、なりふり構わず忠誠を求める幾つかの新興国の動きには悲しみを覚えるばかりだ。
そういう組織は、ある日突然、根こそぎ消え去る運命にある。