天空の村の生活
天空の村から帰って、マシュマロちゃんはホームシックだが、僕はほっとしている。
山の上で静かだと思うなかれ。雨が一晩中降って、その雨が安い鉄板の屋根を叩く。雨が激しくなると、物凄い騒音になる。
朝は4時から鶏や蝉が鳴く。その鶏は軒下に留められているので。寝床からの距離は3メートル。壁は隙間の方が多い位の板壁で、雨が入ってくるほどだから、遮音効果はゼロ。すぐ耳元で鳴かれている感じ。それが、10秒毎に鳴くのでたまったものではない。どんなに鈍感な人でも寝ていられないだろう。
鶏はいたる所の居て、50メートル半径内に50羽はいる。僕は50メートル先の鳴き声でも耐えられない。
こんな酷い寝室は他に無いだろうと思ったら、妹さん夫婦の寝部は隙間の多い高床式で、丁度ベッドの真下に鳥籠があって、2~3羽雄鶏が居たので笑った。
ただ、モン族の女は朝5時には炊事を始めるし、男たちも5時半には働き始めるので、鶏の声は丁度いい目覚ましなのかも知れない。
おまけにベッドは2センチ位の薄い布団のみで、僕の背骨には無理。寝返り打つ度に骨が軋む音が聞こえる。横向きに寝ると今度は腕が鬱血して痛い。
おしっこは、服を着て、草履を履いて、雨のぬかるみの中、暗くて湿っていて汚いトイレに行かないと行けない。
トイレの中は何故だか蝉が10匹も居てびっくりさせられる。
ヒグラシとクマゼミとミンミンゼミを混ぜたようなお姿。
トイレから帰ると、泥と水が着いた足で布団に潜り込むしかない。
山の上なので、気温は20℃以下で寒い。
ベッドとトイレ。この2つさえ良ければ生活出来るだろうが、その2つが最悪なので、とても生きてゆけない。
鶏は翌朝のスープのため、4羽殺された。
スープの中には、青い皮膚の頭や足まで入っていて、慣れないと気持ち悪いが、食べると滅茶美味しい。ブロイラーとは比較にならないコク。
美味しくて鳴かない鶏欲しい。