キャメル

マシュマロいちご園にいる時は、度々氷を買いに使いっぱしりさせられる。

日中暑いので、冷たい飲み物がよく売れるからだ。

バンコクではあまり見られないイチゴジュースやブルーベリージュースを15 バーツで仕入れて35バーツで売る。一本20バーツ程度の利益ながら総売上に対する比率は結構高い。いちごが高過ぎて買えない(買わない)人がお愛想で買ってくれるからだ。

そのジュースを冷やすために氷を使うのだが、土日では一日40 kgくらい消費する。

氷屋に行くと、日焼けした如何にも教養のなさそうな兄ちゃんに注文するわけだが、僕のタイ語も彼のタイ語もおかしくて、お互い何言ってるのか分からない。ただ注文するだけなら何とかなるが、もろもろ付随した会話が分からないのだ。

初めはお互い煙たい存在だったが、手話を交えて喧々諤々で話すうちに、何故か何となく親しみを感じるようになった。

先日、氷を20kg買いに行った時、氷だけじゃなくてウイスキーも売っていたので、タイや日本のことを話していると、その男は変なものを吸い出した。

「それは何だ?」

「これか? これはこれだ」と言って写真の小袋を見せた。

「タバコか?」

「タバコじゃないな。キャメルだ。キャメルと同じ味がする。」

「そんなわけ無いだろう。」

「タバコは高いから吸えねえよ。」

「ああ、確かに高いよね。で、そいつは幾ら?」

「これは10バーツ。」

「旨いか?」

「おお、キャメルの味だ。」

それから、袋の中の草の匂いを嗅いでみると、チョコレートとバニラの匂いがした。

「ちょっと吸わせてくれないか?」僕はそう言うと、写真の紙に草を上手に巻いて僕にくれた。吸口の方を細くするのがポイントで、そうすると草が口に入って来ない。

火を付けて貰って、煙を空にフーっと吹き出しているところを、数人の男衆がニタニタして見ていた。日本人がこんな物を吸うのが面白いらしい。

煙の方は、チョコレートやバニラの匂いはせずに、ただ煙臭かっただけだった。

僕は聞いた。

「これは麻薬か?」

「違う、違う。普通に店で買える。」

「酔っ払うか?」

「ならねえよ。タバコと一緒だ。」

実際にはこんなに上手く話せたわけじゃないが、だいたいこんな感じだったはずだ。

一本分吸うと、煙臭いだけで気持ち悪くなった。

「ありがとう。タバコの方が旨いな。」

そう言って、お礼に10 バーツを上げると、買うと勘違いしてくれたのが写真のキャメルだ。

その翌日、その男は餓鬼共を5-6人ピックアップトラックの荷台に載せて、いちご園にやって来た。

「よー! 来たぞーっ! 日本人」

「オー! 来たかー!」

マシュマロちゃんは聞いた。

「あなたあの人知ってるの?」

「知ってるよ。氷屋だよ。」

「ああ、ほんとだわ。思い出した。何で来たのかなあ?」

氷屋の兄ちゃんは、餓鬼共をいちご園に放流し、こちらに来た。

「あれ、上手かったか?」

マシュマロちゃんは僕がタバコを吸うと泣くので、僕は口に人差し指を立てて、「シー」っと言ったら、ちゃん意味が通じた。

貧乏人ほど子沢山。何でだろう。

放流された餓鬼共は、いちご園の中を走り回り、いちごを少しだけ摘み食いして、何も買わずに5分でピックアップに走って戻った。

「ヨー!また来いよ!」

そう言うと、氷屋はポンコツピックアップの窓から腕を振って帰って行った。

友達になれた気がした。

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