まだまだ高いタイのAIDSによる死亡率
少し前のことだが、商工会議所の部会でタイの医療の現状について大使館の方からレビューがあった。
その大使館の方とは、何度か部会の後でビールを一緒に飲んだことがある。タイの医療についていろいろなデータをまとめてくれていた。その資料の中に死因別の死亡率のグラフがあったのだが、それがとても印象的だった。
現在、死因の第一位は「がん」。そして、第二位がエイズ。
タイにエイズが入ったのは90年に入ってからだが、90年から2000年までの僅か10年間で爆発的に感染者が増えた。感染者は治療することもなく、早期に発症しバタバタと死んでいったのが読み取れる。2000年には死因の第一位になっているが、面白いことに、この影響で心疾患や事故死の割合が一時的に大幅に減っている。それほどインパクトのある現象ということ。
最近では新規感染者は減ったが、エイズによる死亡者数は大きく減っていないのが注目に値する。累積の染者数がいかに大きいかが伺われる。事故死とエイズ死が心疾患よりも二倍以上多い国は珍しいだろう。最新の治療法ではAIDS発症までには10~20年かかるので、2000年までに感染した人が発症して亡くなっているのかもしれない。
国を挙げてのエイズ撲滅運動のお陰で、新規感染者は激減し、今では国民の1.3%の感染率だという。
タイ保健省によると、2014年にタイ国内で新たにエイズウイルス(HIV)感染が確認された人は7324人で、このうち47%が男性同性愛者とニューハーフだった。 2014年末時点の感染者数は計42万6707人。男性同性愛者とニューハーフは極めてハイリスクなグループなので注意されたい。
セックスワーカーに対する HIV 感染予防対策が浸透する中で、近年新たな HIV 感染のハイリスクグループとして認識されているのは、MSM (Men who have sex with men)、注射針を利用する麻薬常習者と青少年である。 HIVの検査に時々行く病院でも、MSMの方への啓蒙活動に力を入れているのが分る。
タイにニューハーフ(カトゥーイ)が多いのは有名だが、タイに居るとMSMも非常に多いのに気付く。
近年は昔と違って、若者の半数が婚前交渉を普通のことだと考えていて、性交渉開始の低年齢化とともにセックスワーカーよりも、恋人や仲間と性交渉を持つ傾向が強くなっているそうだ。問題は、HIVはセックスワーカーとの性交渉によって感染すると思っている青少年が多く、恋人や仲間との性交渉は安全であるという思い込みからコンドームの利用は20-40%程度にとどまっているとのこと。
HIV検査の時、「何時、ハイリスクなセックスをしましたか?」と聞かれ、「特にハイリスクなセックスはしてませんよ。普通の一般女性としただけです。」と答えたら、「コンドームを使わなかったのなら、相手が誰であろうと恋人であろうとハイリスクです。」と言われて感心したのを覚えている。
恋人間でのコンドームなし性交渉が増えた結果、性感染症(STIs)の罹患が最も多い年齢層が青少年(15-24歳)であり、また 15-19 歳の少女の妊娠が千人あたり 33.7 人(1989)から 50.1 人(2010)に増加している(UNGASS, 2010)。この数字は、日本よりもずっと多い。妊娠すると堕胎する割合は少ないので、結果として母子家庭が増えることになる。子供は田舎の親にあずけて、自分はバンコクで子供のいない普通の若者と同じように暮らしている女性が実に多い。
ところで、18歳以下の青少年は HIV抗体検査を受けるために親の承認が必要なため、自身の感染状況について知る機会が少ない。同時にそれは青少年の HIV 感染数が把握しきれていない背景ともなっているようだ。
水商売の経験の浅いロリ派を探して訪タイする方は、知っておくべき現実でしょう。
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