モザイク
このところ、時間を見付けては初期胚の染色体異常について少し勉強した。
その結果、驚くべきことが分かった。
受精後3日から6日の初期胚の全細胞が、染色体異常なしの優良胚か、若しくは全細胞が染色体異常の駄目胚というわけではなく、寧ろ染色体異常なしの細胞と染色体異常ありの細胞がモザイク状に混ざっているのが大半だということ。
染色体異常には、ある染色体が分離に失敗して丸ごと欠損していたり(モノソミー)、丸ごと一本の多い(つまり3本。トリソミー)の場合の場合もあるし、染色体の一部分が欠損若しくは重複している場合もある。
そして、驚くべきは、それらのモザイク状の初期胚からも一定程度の赤ちゃんが産まれて来ることがあるということ。
つまり、次世代シークエンサーで染色体異常を調べても、たまたま検査用に抜き取った細胞の染色体異常の有無を見ているだけで、正常と判定された初期胚にも染色体異常細胞がモザイク状に混じっている可能性があるし、染色体異常のため移植不可と判定された初期胚でも、正常な赤ちゃんが産まれて来る可能性があるということ。
想像では、染色体異常の細胞の多くは途中でアポトーシスで消えてゆくが、異常のない細胞が増えて、異常の有った細胞の欠損を補うというもの。
受精から数日間で起こることは、生命誕生から今までの進化を辿っていると言われる様に、神がかっていて最新科学でも今だ解明されてないほど複雑であり、その分失敗も多いが、それでも種が耐えないような仕組みがあるようだ。
一般的には、危険は犯したくないので、染色体異常があった胚盤胞は廃棄処分とするが、正常な胚盤胞でもモザイク状に染色体異常細胞がある可能性があるので、安心はできない。
次世代シークエンサーでの検査は 未だ一般的ではないので、原因不明の早期流産のうちのかなりの部分を占める可能性がある。
また、廃棄した胚盤胞でも、もしかすると元気な赤ちゃんが産まれてきたかも知れないと思うと、複雑な気持ちになる。