トムのビジネス考
早期退職してタイで自分のネスビジネスをやりたいと言うと、トムは「私も今の会社以外に自分のビジネスがあるのよ」というので驚いた。「私、その仕事大好き。だって絶対にお金が無くならない仕事だから。最近はお金がないから、ちょっとしかやってないけど、この仕事は15歳の時からずっとやってるの。」15の時から一人バンコクに来て家族を支えてたんだ。
絶対にお金が無くならない仕事。そんな旨いビジネスがあるのかと思ったが、話を聞いてみるとなるほど面白い。言葉が通じないので細かい所は分からないが、おおまかに言うとトムのビジネスは次のようなものらしい。
まず、中国人がパソコンの部品や周辺機器を安く作ってタイに大量に持ち込んでいる。その中国人はその部品をタイでたくさん売りたい。扱っているのは、USBメモリー、マウス、ゲーム用ジョイパッド、キーボードといった類の小物で、何百種類もある。
トムは、そのカタログとプライスリストを持っていて、それをパソコンショップに配る。そのカタログにはトムへの連絡先が書いてある。ここで、あるショップのオーナーがゲーム用ジョイパッドを100個買いたいと思ったとすると、トムに注文の電話を入れる。ゲーム用ジョイパッド100個の場合の売値は、例えば一個あたり85Bとする。この時点でトムは8,500Bを払ってくれるお客さんをゲットしたことになる。注文を受けると、トムは中国人のところにタクシーで行って、ゲーム用ジョイパッド100個を買い付ける。この時の単価は65Bで、その価格はトムの持っているもう一つのプライスリストに書いてある。計6,500Bで買い取って、荷物をタクシーに乗せ、その足でショップのオーナーに品物を届け、お客から8,500Bを手に入れる。すると、トムの手の中には2,000Bの利益が残る。6,500B投資して2,000Bを得るので、利益率は30%になる。
ここで問題なのは、注文を受けても現金がないと品物を中国人から買えないことと、買ってからショップに売るまでの小1時間のリスクがあるということ。注文取消しや返品、不良品の場合と取り扱い等、細かいことは分からない。
メリットは、お客がついてから品物を買うので在庫のリスクがないのと、お客から注文を得た段階で利益がほぼ確定していること。この取引の前後でトムのお金が減ってしまうことは、トムに言わせると「絶対にない」とのことだ。
もう一つのメリットは、トムはこの中国人との商売を、もう8年以上続けていて相互に信頼関係ができていること。
中国人が何故直接ショップに売らないのかはよくわからない。タイ人を通して売りたい理由があるとか、商売の表に出たくない訳があるのかもしれない。例えば、品物の輸入の際に税金を納めてないとか、横流し品とか、何かイリーガルな面があるかもしれないが定かではない。トムは何も悪いことをしていないと言う。
過去の記録を見せてもらうと、一回の取引としては、50,000Bで買って60,000Bで売っているのが一番の大商いだった。大したことはないが、この商いに要した時間はたった1時間で、それで10,000Bを得たことになる。この場合、利益率は20%。決して利益率は高くないが、もしこの商いが1か月に5回あったとすると、1か月で50,000Bのお金ができることになる。トムの言うように元手は減らないし、副業として出来る程度の時間しか要しない。
その仕事がどの程度スケーラブルなのかどうか分からないが、スケーラブルだとすると、月500万円分買って600万円で売ると100万円利益になり、1年で1200万円の収入ができることなる。会社でなくて個人事業としてやれば、実質的に税金なしなので、十分にタイで優雅に暮らしていけることになる。
それはともかく、トムのビジネスは、起業のルールのところにもあるように、
- 先にお客さんがいる。
- お客さんのお金で商売をする(短時間、自分のお金を使うけど)
- 在庫を持たない。
- 信頼出来る長年の関係に基づいている。
の4点において成功の(失敗しない)ルールに合致しているようだ。
もしも、お客さんから先にお金をもらって、それで仕入れに行けたとすると完璧だ。
トムはそのビジネスの元手のために30万円ほど貸してくれないかと言ってきた。さて、どうする? 中年早期退職者にピンチ到来!
絶対なくならない元手が無くなってしまうリスクは何処にある?僕のこれまでの経験では、絶対帰ってくるはずのお金が帰ってきた試しはない。12月まで務めたトムの会社の女社長は、トムをわが子のように可愛いがり、普通より高い給料を出し、トムの家の借金を肩代わりまでした。僕にとっても、どこか自分の娘みたいな感じのするトムのために人肌脱いでやろうか?トムの言うとおりに行けば、利益で彼女の生活費が賄える。いつの間にか生活費等で元手がなくなってしまうのを避け、他のお金とコンタミすることなるお金の出入りを記録するために、トムは専用の銀行口座を作りたいというので、とりあえずそれには賛成した。
まずは、もっと少額を彼女に投資して、お金と物の動きを観察してみようか?自分の将来のビジネスに、何か教訓を与えてくれるのなら、それはまさしく投資と言える。
僕がバンコク銀行で口座開設した際に、一緒にトムの口座を作ったのは、そういうわけである(詳しくはこちら)。
Topic : タイ・バンコク
Genre : ForeignCountries