いちご園でのタイ語特訓

マシュマロちゃんに言わせると、僕はいちご売りが得意らしい。自分自身もマシュマロちゃん程ではないにせよ、妹夫婦の二人よりはよく売ると思っている。

マシュマロいちご園に来る客の殆どはタイ語しか話せない人達だが、僕はそこで堂々とタイ語でいちごのたたき売りをやっている。

「これ、普段は300バーツだけど、今は特別。2つ買ってくれたら500バーツでいい。もってけ泥棒!」

みたいにやっている。

お陰で、どんなタイ人とも最低限の会話は出来るようになった。

300バーツと言ったのに、200バーツと聞き間違えられることも度々。2と3くらいちゃんと発音できるはずなので、どうして聞き間違えられるのか不思議だ。でも平気。何度でも言い直す。

中には嫌な客もいる。くどい値切り客だ。

「他にもこれだけ買ったんだから、一つ200バーツにしてくれよ。いいよな? えっ!ダメだって? ケチなこと言うな!。なら、買うの辞めた。他の店はもっと安かったぞ!」

なんてものザラ。

そんな客にも笑顔で対応できる。値切りは観光客の楽しみの一つで、僕もスクンビットの屋台では滅茶滅茶厳しく値切る。気に食わないと、捨て台詞を吐いて買わずに立ち去ることもよくある。なので、気持ちは良く分かる。彼らも、値切りを楽しんでいるのだ。

だから、腹立たしく思うことはない。

「それだと儲けなしになっちゃから、一つでもいいから250バーツでどう?」

とか言えば、多くは交渉成立だ。

大抵は僕のタイ語が変なので、

「あんた、何処の人?」と聞かれるが、

「日本人だよ。」

「へい、日本人かい。日本人がタイ人に物売りか?」

「そうだよ。他にもやってることはあるけど上手く行かなくてね。」

「へええ、何年タイに居るんだい?」

「もう3年になりますね。」

「3年にしてはタイ語上手だね?」

「そんなことないです。」

「いや、大したもんだ。タイ女の彼女が居るんだろう?」

「うん、いますよ。タイの女は最高だね。」

「へえ! やっぱりねえ!。分かった! じゃあこれひとつくれ!」

何が分かったのか分からないが、こんな会話も日常茶飯事だ。

驚くべきは、日本語を少し話せるタイ人が実にたくさん居ることだ。

僕が日本人だと分かると、大抵向こうから日本語を話してくる。

「あなた、日本人ですか?どこから来ましたか?」とか、

「私、日本の会社で働いてる。日本人好きね。」とか、

「福島で3年働いてました。タイは好きですか?」とか、

「日本のイチゴ美味しいですね。日本は寒いですね。タイは暑いですか?」

なんて会話が出てくる。

これが実にたくさん居るので驚く。5%くらい居るような気もする。タニヤならまだしも、こんな田舎街に日本語が話せるタイ人が多いのは、日本とタイとのつながりの深さを思わせる。

近くのパクチョンという街には、不思議に英国人、アメリカ人が多い。多分、ナナかパタヤーに働きに出ていたコラート出身の女と出来て一緒に暮らしているのだろう。彼女たちはもちろん英語が流暢だが、黒い顔をしていて日本語は出来ない。

僕は英語でも日本語でもタイ語でもオッケー。「どんと来い」だ。

この経験は、いつか何処かで役に立つかも。。。

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キャメル

マシュマロいちご園にいる時は、度々氷を買いに使いっぱしりさせられる。

日中暑いので、冷たい飲み物がよく売れるからだ。

バンコクではあまり見られないイチゴジュースやブルーベリージュースを15 バーツで仕入れて35バーツで売る。一本20バーツ程度の利益ながら総売上に対する比率は結構高い。いちごが高過ぎて買えない(買わない)人がお愛想で買ってくれるからだ。

そのジュースを冷やすために氷を使うのだが、土日では一日40 kgくらい消費する。

氷屋に行くと、日焼けした如何にも教養のなさそうな兄ちゃんに注文するわけだが、僕のタイ語も彼のタイ語もおかしくて、お互い何言ってるのか分からない。ただ注文するだけなら何とかなるが、もろもろ付随した会話が分からないのだ。

初めはお互い煙たい存在だったが、手話を交えて喧々諤々で話すうちに、何故か何となく親しみを感じるようになった。

先日、氷を20kg買いに行った時、氷だけじゃなくてウイスキーも売っていたので、タイや日本のことを話していると、その男は変なものを吸い出した。

「それは何だ?」

「これか? これはこれだ」と言って写真の小袋を見せた。

「タバコか?」

「タバコじゃないな。キャメルだ。キャメルと同じ味がする。」

「そんなわけ無いだろう。」

「タバコは高いから吸えねえよ。」

「ああ、確かに高いよね。で、そいつは幾ら?」

「これは10バーツ。」

「旨いか?」

「おお、キャメルの味だ。」

それから、袋の中の草の匂いを嗅いでみると、チョコレートとバニラの匂いがした。

「ちょっと吸わせてくれないか?」僕はそう言うと、写真の紙に草を上手に巻いて僕にくれた。吸口の方を細くするのがポイントで、そうすると草が口に入って来ない。

火を付けて貰って、煙を空にフーっと吹き出しているところを、数人の男衆がニタニタして見ていた。日本人がこんな物を吸うのが面白いらしい。

煙の方は、チョコレートやバニラの匂いはせずに、ただ煙臭かっただけだった。

僕は聞いた。

「これは麻薬か?」

「違う、違う。普通に店で買える。」

「酔っ払うか?」

「ならねえよ。タバコと一緒だ。」

実際にはこんなに上手く話せたわけじゃないが、だいたいこんな感じだったはずだ。

一本分吸うと、煙臭いだけで気持ち悪くなった。

「ありがとう。タバコの方が旨いな。」

そう言って、お礼に10 バーツを上げると、買うと勘違いしてくれたのが写真のキャメルだ。

その翌日、その男は餓鬼共を5-6人ピックアップトラックの荷台に載せて、いちご園にやって来た。

「よー! 来たぞーっ! 日本人」

「オー! 来たかー!」

マシュマロちゃんは聞いた。

「あなたあの人知ってるの?」

「知ってるよ。氷屋だよ。」

「ああ、ほんとだわ。思い出した。何で来たのかなあ?」

氷屋の兄ちゃんは、餓鬼共をいちご園に放流し、こちらに来た。

「あれ、上手かったか?」

マシュマロちゃんは僕がタバコを吸うと泣くので、僕は口に人差し指を立てて、「シー」っと言ったら、ちゃん意味が通じた。

貧乏人ほど子沢山。何でだろう。

放流された餓鬼共は、いちご園の中を走り回り、いちごを少しだけ摘み食いして、何も買わずに5分でピックアップに走って戻った。

「ヨー!また来いよ!」

そう言うと、氷屋はポンコツピックアップの窓から腕を振って帰って行った。

友達になれた気がした。

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プロフィール

ハムケン

Author:ハムケン
サラリーマンはもう飽きた。気がつけば人生の残りも僅か。ここはひとつ、窮屈な日本を抜け出し、活力あるのにどこかゆる~いタイを舞台に、自分らしい第二の人生に旅立つことを決めてしまった親父。
タイに来て早10年。挑戦と冒険の心を忘れずに、異国でセカンドライフを謳歌している60代のオヤジです。

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