旅愁
僕は子供の頃から旅が好きだった。
中学、高校の頃も、旅物のドラマを見るのが好きだった。その頃から、人生は旅だと思うようになり、大伴旅人の人生感に惹かれ、息子には大伴旅人と同じ名前をつけた。
しかし、40代になって、仕事で実際の旅行を多くするようになったのに、人生は旅という感覚が持てなくなっていた。
プーから、「今日は幸せの日だから、飲みに行くよ。」と誘われた。この頃プーは旧友との交友に忙しくて、あまり僕のところには来ていなかった。
「今日は何の日?どうして幸せの日なんだ?」
「花の金曜日だから。タイ人は金曜の夜はみんな飲みに行くのよ。仕事が終わったら私と過ごす時間を持ってね。」
「なあんだ、そういうことか。」
「金曜はタイ語でワン・スック。幸せはクワーム・スックと言うでしょう? スックは幸せの意味。だから今日は幸せの日。」
スペルが違うので単なる洒落と思うが、今まで気が付かなかった。
彼女の本名は、スック・アロームと言い、幸せ気分という感じの意味になる。
「若いセクシーな女がいっぱいいて、ステージで美女がクネクネ踊っているところがあるから、一緒に行きましょう。」
連れて行かれたのは、Bang Bua Thongの街道沿いのオープン・エアー・バー。青印のところ。
外見はこんな感じ。信号のない街道をトラックや車が時速100km以上で走る街道の脇にあった。
サハラという名前のバーだが、ステーキ・ハウスと書いてある。でも、誰もステーキなんか食べてない。
各テーブルの間を泳ぎ歩き、いつもグラスをいっぱいにしてくれる彼女たちは、、、全員タイ人じゃなくて、ラオス、ミャンマー、ベトナム、カンボジアから来た女。皆胸が小さくて子供っぽくて好みではなかった。
隣に座らせると結構高いサービス料を取られる。釣れだすと3000B。高いじゃん!
写真の彼女はベトナム人。自称20歳(多分17歳くらい)
始めは無愛想だったが、後で慣れたら可愛かった。恥ずかしかっただけのようだ。
プーと学校の先生のポーラ。先生の長い夏休みももうすぐ終わる。生徒の一人のパパも決まって一安心。
顔が似てるので、ベトナム人の姉妹かと思ったら、姉妹ではないそうだ。
彼女達はあまり上手にタイ語を話せない。この店はアメリカンな感じを出そうとしているらしい。
しかし、皆が注文する料理は普通のタイ料理。
見ると、女を求めて来た客は少なくて、家族連れが多い健全なカラオケ・バーだった。
夜がふけるにつけてステージ前も満席になった。僕は携帯の電池がなくなって沈没。
生バンドの音楽は懐かしかった。
大好きなタカテンもバッチリ。ルークトゥンもいっぱい。
ローリング・ストーンズ、イーグルス、ジョン・デンバー、アルバート・ハモンドなんかも流れて、僕はいい気分。
行き掛けに買っていったウイスキーボトルは1時間ほどで空になってしまった。
酔とともに、旅愁が漂って来た。
これから誰と会い、何が待っているか分からない僕の人生。不安がいっぱいだが、毎日が新鮮な発見に満ちていて、明日が楽しみだ。
「そうだ、僕は今人生という旅をしているんだ」
星の無い夜空を見上げると、大音響が空に吸い込まれていくのが見えた。
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Topic : タイ・バンコク
Genre : ForeignCountries