働けないダメ親父
事故からひと月半近く経って、ハムケンは仕事が出来ないダメ親父になった。
大体治ったと言っても、左足首は未だに病院通いで、歩くと少し痛い。舗装道路なら真っ直ぐ歩けるが、デコボコ道だと振らついて颯爽と歩けない。
ひと月半もお風呂に入ってないので、足首から臭い皮膚がボロボロ剥けてくる。傷周りの皮膚をきれいに吹いてくれるのは、優しい看護婦さんだけ。
右肩は手術したら余計に痛くなって、未だ当分使えそうにない。
モトサイはハンドルが掴めず運転不可。
自動車は近所の数キロに限って運転出来るが、自分でも危なっかしいと感じる。そもそも、医者からは未だ駄目だと言われている。
重いものは一切持ち上げられない。ほんの2キロ位の物なら運べるが、運ぶと後で肩が痛くなる。
いちごを売っても、片手じゃ売れたいちごパックをビニール袋に上手く詰められないので、ワーカーから「私がやるからあっちで座ってなさい。」と言われてしまう。
車のシートベルトも腕が回らず締められない。
パンツは履けるが、Tシャツは肩が痛くて一人で着られない。
右腕を肩以上の高さに上げられない。上げると痛い。
未だに寝返りが出来ない。
左足首、右肩にはシャワーもかけられないので、一人でお風呂(行水)に入れない。
頭は一見治ったようだが、未だに目眩が酷い。目眩の強さは強烈で、布団から起きたり、布団に寝転んだ時などに5秒ほど目が回ってクラクラする。まるで三半規管が狂って回っているようで、真っ直ぐ座ってもいられない。だけど、5秒過ぎれば目眩は消える。
先日、病院に行ったとき、エスカレーターで上がりながら書類を持ち上げて見たら、目が回って後方に振らついて、後ろの男性に向かって倒れかけてしまった。男性が支えてくれたので良かったが、一人だったら後ろ向きに転げ落ちていたかも。
どうして目が回るのか知らないが、医者が言うには、普通のことで、数ヶ月で消えるから心配ないらしい。
一日働かずにゆっくりしていても、昼過ぎには眠たくなって30分位寝てしまう。
そんな訳で、未だに何にも仕事しないダメ親父になっている。
問題なのは、何も出来ないことの他に、何も身体を動かしたくなくなってしまったこと。
グータラ親父と言われたり、親父のくせに子供と同じと言われたりする。
「もうちょっと待っていたまえ! あとひと月もすれば、以前と同じ元気な親父に戻るから。」