ピュアホワイトの悲劇
タイで農業関連の会社を起業した知り合いから、
「北海道の白くて甘いトウモロコシをやったらどうか?」
と勧められたことがある。
僕はいちごの裏作物を探していたのだが、彼が言うには、そのトウモロコシも雨季は良くなく乾季が良いという。
トウモロコシなんて、タイの雨季に最適な作物で、種蒔いて数度肥料をやれば、あとは収穫するだけ。水やりなんて必要なし。
トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバの畑は、一言で言えば、それしか栽培出来ない不毛な農地だ。水が無くてもタイでトウモロコシが育たない土地なんてない。
ましてや、カオヤイ農園は以前トウモロコシを栽培していたらしく、僕とマシュマロちゃんの間では、その場所を以前はトウモロコシ畑と呼んでいたくらいだから、白いトウモロコシだろうが育つに決まっていると思った。
だから、知り合いに誘われる前に、こっそりピュアホワイトの種を日本から買って来て植えてみたことがある。
残念ながら、草丈20センチくらいの時に、雑草にまみれていつの間にか消えてしまった。
ところが、先駆者がいて、大変なことになっていた。
北海道新聞の記事によると、
「海外の北海道フェアなどで人気の白いトウモロコシが、農業大国のタイで続々と生産され始めている。ピュアホワイト北海道」などの名前で市場に出回り、価格は日本からの輸入品の半分以下。タイは3月に日本産トウモロコシの輸入を禁止したばかりで、貿易関係者からは「日本産が締め出され、模倣品が広がるなんて」と嘆きが漏れる。」
その先駆者というのは、僕らと同じくナコンラチャシマの農家で、種は知人に頼んで日本から持って来て貰ったのだそうだ。
タイ農業·共同組合省に依ると、「ピュアホワイトはタイで品種登録されていないが、生産や販売は違法ではない。」とのこと。
因みに、日本からの輸入価格は、一本270バーツと激高なのに対して、彼らのタイ生産品の価格は、一本30ー70バーツ。
勝負になりません。
そして、今日僕がタラートナット(いわゆる市)で買ったのは、三本で20バーツ成!
これがピュアホワイトなのかどうかは定かではないが、めっちゃ柔らかくて甘くて美味しかった。三本ペロっと食べてしまった。
それで、僕が言いたいのは、
ピュアホワイトを開発した企業や日本の農家には悲劇だけれど、そもそもコピー再生可能なものは、それが作物·生物だろうがソフトウェアであろうが、法律でコピー禁止しても実効力はないに等しく、価格は有名な経済学者が予言した通り、限りなくゼロに近づくということ。
ソフトウェアに関しては、既に実際そうなっている。
社会全体から見れば、その方が生産性が向上するからだ。