胃のない胎児4:繋いだ命
住込みワーカー夫婦の間で産まれた食道と胃が繋がっていない子供は、生後4ヶ月が過ぎ、順調に体重が増えてきた。
今の体重は5kg超
唾液が飲み込めないので、母親が頻繁に喉に溜まった唾液を吸引しなくてはならず大変だ。
ミルクも飲めないので、お母さんが胃瘻チューブからミルクを入れて飲ませている。
一月半程前迄は、ミルクも一回に50ml程しか飲めず、痩せて体重も増えなかったが、もっとミルク量を増やす様に言ったのが効いたのかどうか知らないが、ともかく急に脂肪が付いてきて、手足も良く動かすようになった。
ミルクを飲ませてもゲップで咽ないところから、A型つまり食道と気道は繋がってないのではないかと思う。
でも、その方が胃から肺へ食べ物が入って肺炎を起こすことがないので良かったのかも知れない。
お母さんの顔を見つめたり、笑ったりすることもある。お母さんの声にに反応して笑うこともある。
医師が言うには、体重が6kgを超えたら手術が出来る。恐らくそれは、僕らが日本から帰って来た頃だ。
手術は食道を繋ぐ訳だが、長さが足りないとやや厄介ながら、上手く繋がれば、口からおっぱいや食べ物が食べられるようになる。丁度、離乳食を始められる時期なので、手術が成功すれば、更に元気に育つことだろう。
一昔前迄は、この手の先天異常は命を繋ぐことはまず無理だったが、最近の日本では85%位生きられるようになった。
タイで、この子供の食道が繋がってないことが分かった時、コラートの医師は生きられる可能性は70%位だと言った。高性能の画像診断機器が使えないとか、熟練医師が少ない中で、70%は難しいんじゃないかと思ったが、結果として今まで育って来られたので、多分生き延びられるだろう。
ところで、気になる医療費だが、驚いたことに、全額公費負担が適用された。唾液を吸い取る電動アスピレーターだけは4000バーツで買わなければならなかったが、ICU管理代、2ヶ月程の入院代、薬代、処置費用等、ワーカー夫婦は全く払っていない。
そればかりか、今度の手術は、タイの東大に当たるチュラロンコーン大学医学部病院で受けることが決まったが、その手術代もすべて公費負担である。
タイにこんなに庶民に優しい医療保険制度があったとは知らなかった。
勿論、誰でも適用される訳じゃなくて、高度医療が必要だが、本当に支払い能力がないごく一部の場合に限る。
お陰で僕らが援助しなくて済んでいるので、僕らにとっても有り難い話だ。
手術が無事終われば、お母さんも働けるようになると思う。そうなれば、カオヤイ農園に関しては、次期植付迄はなんとかマネージ出来そうである。
ここまで来れば、後は元気に育ってくれると思うし、そう願うばかりだ。