胃のない胎児
超音波の検診で三度とも医師から「胎児の胃がない」と言われた。
おまけに羊水過多。
僕は絶対に妊娠時期の計算間違いで、予定日より一月早く産まれると思っていたが、そうじゃなかった。
約一ヶ月前、オンボロの超音波診断機の写真を一枚だけ見せて貰ったが、あばら骨の下は真っ黒で、胃も肝臓も腸も膀胱も腎臓も何にも見えなくて少し変に思えたが、余り気に留めなかった。
妊婦は、一月前に2.5リットル程羊水を抜いたが、今はまた双子みたいに大きなお腹になっている。
ワンナムキアオで住込んで働いて貰っている夫婦の話である。
半ば他人事じゃないので調べてみると、
「胃が見えない」プラス「羊水過多」は、10中8、9食道閉塞のようだ。胎児が羊水を飲み込めないので、羊水過多になり、胃は空っぽで見えないと言う訳。
多くの場合、食堂と気道が間違ってくっついているらしい(C型)。気道とはくっついてないが、食堂が短く接合してない場合もある(A型)。
何れにしても、乳が飲めないので、放っておいたら死んでしまう。可及的速やかに食道を繋ぐ手術が必要になる。
母親の母親は、心配だから親元のチェンライの田舎に戻って、そこで産むように指示し、妊婦も一時は帰ると決心したが、もし本当に胎児·新生児消化管閉鎖だったら、小さな保健所しかないチェンライの田舎で無事に子供が産まれ育つかどうか疑問だ。
せっかく、コラートの大病院(公立)で羊水過多と胃が見えないことが分かっていて、医師も「出産後直ぐには退院出来ないと思っていて下さい。」と言っている訳だから、そこで産むのが正解だろう。そういうことをマシュマロを通して言ったところ、彼らの気が変わってチェンライに帰るのをやめた。今日も大きな腹を抱えていちご園で働いた。
一応コラートは人口でタイ2番目の大都市(チェンマイよりも大きい)なので、タイといえども適切に処置出来るのではと期待している。
幸い、両親は質素に生活して、給料の大部分を貯金に回しているので、いざとなっても手術代は出せるだろう(難しい場合は無理かも知れないが)。
嫌なのは、食道閉塞がある場合、心臓にも先天異常がある場合が多いようなで心配は尽きない。
無論、たまたま胃が見えなかっただけで、実はちゃんと繋がっていて、元気に育つ可能性もある。
胎児·新生児消化管閉鎖と担当医から診断された訳ではなく、僕が勝手にそう思っているだけの話だから。
胎児·新生児消化管閉鎖は2000人に1人くらいあるようで、それ程稀な先天異常ではなく、ダウン症と同程度のようなので、産科の医師なら知っているはず。
来月には、マシュマロいちご園で元気な泣き語を聴きたい。