愛犬つばきちゃん死す
日本に残してきた愛犬つばきが、昨夜息を引き取ったと妻から連絡を受けた。
17.3歳だった。
今日の夕方、娘と息子が同席して火葬したそうだ。
僕はタイに独り来たので、この5年程、愛犬とは年に数回会うだけだった。日本にいる妻が、腹を押して排尿させ、日に何度も寝返りをさせて、寝たきり老犬の介護をせっせとやってくれたので、つばきは必要以上に長生きしてしまった。妻は福祉学科を出て、社会福祉士で、介護施設の所長もしていたので、人の介護は得意だったが、つばきの介護には、驚くほどの愛情を込めて世話していた。
薔薇の咲く庭とラブラドールレトリバーは、僕が手にしたかった幸せ家庭の象徴で、ほんのいっときだったけれど、実現した。薔薇の時期に観光バスが来たこともある。
愛犬を囲んで、家族に微笑みが帰ってきた。
お風呂に一緒に入って、ボール遊びするのが大好きだった。
妻とのいざこざの際に、二人の間に入って喧嘩は止めてと言いに来た。
妻が精神的に病んで落ち込んだ時に、つばきが彼女の心を癒やしてくれた。
だからなのか、つばきが体長不良の時には、楽しみにしていた旅行もキャンセルして介護する程だった。
そういうところを見て、妻は実はとても愛情深い女性だったんだなと思う。
一方、僕はつばきを放って、家族も放って、独り暮らしの母も放って、この地で新しい愛犬ベリーと暮らしている。全部、置き去りにして、リセットしてしまった。
こういう人間は、孤独死して、干乾びた死体の埃が風に舞い散るに違いない。
- Related Entries