消えた30000バーツ

 

トムは前の会社の40代後半の女経営者から自分の娘のように可愛がられていた。

その女社長の夫婦は、子供に恵まれなかったので、従順なトムを我が子のように感じていた。給料も20000バーツと相場よりも50%以上良い額を払い、2年前の大洪水の時に会社が閉鎖に追い込まれ、多くの従業員を解雇せざるを得なくなった時も、トムを自分の経営する別の会社に移動させ雇用を守った。バンコクよりも先にトムのチェンライの実家が洪水に見舞われて、トムが1か月も帰省したのにも関わらず、その間の給料を払った。

当時、その会社はバンコクとチェンマイに2店新しくジャズバーを展開する準備に追われていて、女経営者はトムにチェンマイ事業の経理と在庫管理を頼むつもりだった。そうすると、必然的に当面バンコクとチェンマイを行ったり来たりになる。そこで、女社長はトムに自家用車を買わせ、車両購入費とガソリン代を半分会社持ちとすることで、トムにバンコクとチェンマイの行ったり来たりをお願いするつもりだった。

しかし、その女社長はカナダのビジネスのために、カナダに行かなくてはならなくなった。しばらくして、仕事が落ち着いたのか、彼女はトムをカナダに呼ぶことに尽力したが、トムは英語がまるで出来ないし、(末っ子なのに)チェンライの一家の大黒柱であるので、見知らぬカナダに行くのはどうしても嫌だった。僕と会えなくなるから、というのも理由のひとつだと言った。

トムは、カナダ転勤を断るためには、会社を去らなければならなくなり、今年の1月1日にやむなくチョンノンシーの金融会社に転職することにした。初月給は13,000Bと減ってしまうが、3ヶ月後には15,000Bに増えることになっていて、待遇としては悪くなかった。しかも、チョンノンシーは僕のコンドミニアムから一番近いBTS駅で、仕事帰りなどに寄り易い。だた、その会社に就職するためには、万一会社の備品を盗んだりして損害を与えた場合の保証金として、入社時に30,000Bを入れなければならなかった。

しかし、トムに30,000Bというお金はあるはずもない。トムは僕に貸してくれないか頼んだ。

「絶対返すから、お願い!」

「何時どうやって返すんだ?」

「会社を辞める時。辞めたら30,000Bは戻ってくるので、絶対に無くならないから心配ない。」

「それは何時だ?」

「あなたの会社を始めた時。私、あなたの会社で働くから。」

「・・・」

無職で給料がないと、誰かがその穴埋めをしてあげなければならなくなり、その矛先はきっと僕に来るだろうから、ともかく早く就職して欲しいと思った。絶対無くならないお金なら、利息なしの銀行に入れておいても仕方がないし、人助けになるならと思って貸してあげた。

 

新しい会社に入ってみると、よくあることだが、話がいろいろと違っていた。

  • 職場はチョンノンシーではなく、中華街のヤワラートだった。
  • 朝8時〜夕方5時の話だったが、朝8時〜夕方6時の実質9時間労働だった。
  • しかも、残業が多かった。
  • それなのに給料日に、残業代は払ってもらえなかった。

だんだんとトムのフラストレーションは溜まって行き、会社を変わりたいと言い出した。

僕はトムに言った。

「そんな会社は良くないから変わればいい。30,000バーツも戻ってくるし。」

すると、予想もしない答えが。

「それが、戻らないの。。。」

「!!! なにー! 話が違うじゃないか!」

「1年未満で辞めると、戻らない契約みたい。」

「みたいじゃないだろう。契約書を見せろ!」

「持ってない。会社が持ってるけど、私は持ってない。」

「!! 分かった。絶対やめるな!」

「分かったわ。」

 

やれやれ、危ないところだった。少なくともお金が戻るようになるまでは働いでもらわないと、と思ったのもつかの間。

 タイ人が1年間も我慢出来るわけがない。

1年どころか、その話をして1週間後にトムは会社を辞めてしまった。

「ごめんなさい。私どうしても我慢できなかった。お金はちゃんと返すから安心して。」

安心してと言うが、僕が思うに、トムが30,000バーツを溜められる見込みは永遠にないと思う。

 

 

絶対無くならないはずの30,000バーツが、こうして消えてしまった。

 

 

閉店したタイレストラン「パタヤ」で働いていたタイ人のメイさんとアイちゃんは、口を揃えて言っていた。

「タイの女に貸したお金が戻ってくるわけがないでしょう。」

 

  

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 いまごろタイで大ブームのFurby

どこも品切れ状態。

 

 

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