後ろ向きのヒマワリ
「お母さんがね、いちご畑の後ろにヒマワリを植えたら良いって。お母さん、良く考えてるわ。私、横にコスモス、後ろにヒマワリで囲まれたいちご園にするの。」
とマシュマロちゃんは言った。僕もいいアイデアだと思った。
ヒマワリの種は腐るほどあったし、時期も問題ない。ほぼ放置で沢山咲いてくれる。背が高いので、後方を飾るのに適している。
しかし、良く検討してみると、方角が悪いことに気が付いた。占いの話ではない。太陽の向きの話だ。
ヒマワリの蕾は文字通り太陽を向いて向きを変える。花が咲く頃は、動きが鈍くなって、大抵は東か南を向いて咲く。僕のいちご園は北に道路を接していて、一番後方が真南になる。つまり、花は後ろ向きに咲いてしまうことになる。
このことに気付いてマシュマロちゃんに説明した。
「ヒマワリは後ろに植えたらダメだ。皆後ろ向きに咲いてしまう。だから、東側の脇に植えよう。そうすれば、いちご園を向いて咲く。後方には別の花を植えよう。」
しかし、理解してもらえなかった。
その頃は喧嘩ばかりしていて、僕の言うことに耳を貸さなかったと言う背景もある。また、時間と労働力不足で、他の適当な苗を用意出来なかった。
マシュマロちゃんが日雇い労働者にヒマワリの種を蒔くように指示した時、僕らは喧嘩していて上手くコミュニケーションが取れなかった。日雇い労働者がいちご園の後方にヒマワリの種を蒔き出したので僕は焦ったが、僕とマシュマロちゃんとで違う指示を出しては日雇い労働者が困惑するだろうし、彼女の指示をひっくり返したら、火に油を注ぐことになるので、苦い思いで黙って我慢した。
経営者が自分の思い通りに出来ない理由は、社員や他の取締役と意見が合わなかったりするからだ。強くて威厳のあるオーナー社長ならいざ知らず、大抵の雇われ社長はこのような小さなステップでも思い通りに出来ないことが多い。
結果は写真の通り。
第二ポンプの位置からお店を見た様子。
この時は咲き始めだが、今は満開。
「あなたの言った通り、みんな後ろ向きに咲いちゃたわね。」
当たり前だ。感情でも意地でもない。自然の摂理だから。
この頃は、すっかり仲良くなって僕の言うことを聞くようになった彼女だが、理屈より感情に支配されている女だから、また何時変わるか分からない。
ヒマワリは、前から見るときれいでないが、時々お客さんがヒマワリの後ろに回って写真を撮っている。楽しそうだ。
外から来るいちごの大敵スリップスをここでキャッチしてくれたらそれでいい。(スリップスは黄色に向って飛ぶ)
日本では雪が降るような時期に、真夏の花のヒマワリが咲くタイ