最後のノンタブリ·オフィス
昨日、トンボ帰りでノンタブリのオフィスに行ってきた。
オフィスの二階の倉庫に残っていた在庫をロジスティックス会社が手配した運送会社に引き渡すためだ。
約束の時間よりも運送会社が早く来たので、午前中に荷出しは完了してしまった。
荷物は日本の業者に売り渡すために来週日本に搬送される。
おめでとう。これで日本から仕入れた商材のうち、一番僕の会社の経理を圧迫し続けた不良在庫を全部売り抜けたことになる。
と言っても、いわゆる損切りで黒字が出た訳ではない。掃けない在庫の形で死んでいたお金を活かすために苦渋の決断として売却を決めたのだった。
来月には2年係で準備して来たハーブの輸出が始まる。こちらは買い手が決まっていて、供給さえきちんと出来れば定期的な取引が可能になりそう。
ということで、僕の事業は起業時からすっかり変わってしまった。
もぬけの殻になった僕のノンタブリオフィス。物がなくなって妙に音が響くので、鼻歌を歌いながら、もう一度、三階の寝室、二階の倉庫、一階のオフィスを歩いて廻って、何百回もウンコしたトイレで最後の用を足した。
入口の扉を閉めて玄関先に座り込み、普段は吸わないタバコに火を着けた。
トムのこと、モンのこと、営業部長のこと、展示会のことなどが思い出された。
「どれもパッとしなかったなあ。」
タバコの煙を空に拭き上げながら呟いた。
もう二度とこの扉を開けることはないだろうと思った。
このオフィスの契約は来月末で切れるが、次のテナントは決まっていないようだった。
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