タイ人の食費:日本人とバンコク人とタイ地方人
「タイ人は料理をあまり作らず、いつも外食をしている。」というのは、バンコクに来てタイ人を観察して誰もが気付くことだが、本当だろうか?
確かに、バンコク市内または近隣県の住宅街では、ワンルームのアパートには台所が無かったりするし、職場の近くで朝も昼も夜も屋台メシを食べているタイ人をよく見かける。
しかし、少し地方に行くと(それも地方都市じゃなくていわゆる田舎)、逆に皆家で炊事して食べているように見える。
この疑問に応えるデータがあった。
僕の好きなライターである小堀晋一さんが日タイ文化交流型Angleに寄稿した記事の中に、タイ国家統計局が出したデータをグラフ化したものがあったので紹介したい。
(小堀さんはタイ王国和僑会の会員でもあり、月例会等で数回話したことがある程度だが、僕は何故か男惚れをしてしまった。元新聞記者で、今はフリーランスの記者としてタイの文化を紹介している)
このグラフを見ると一目瞭然。
外食が多いのは、やっぱりバンコク首都圏だけ。バンコク人だけが外食費が内食費を上回っている。
タイ北部やイサーン地方(東北部)では内食費の方が3~4倍多い。
ここで外食費は何かということだが、
- 屋台やレストランで食べる。
- 屋台で調理済みのおかずとご飯を買って来て、家で食べる。
の二つのパターンがあると思う。僕の観察では2が多いように見えるが、今回のデータで2が本当に外食として集計されているのかどうかは不明。
外食費と内食費を足したのが食費だから、バンコク首都圏と南部の人が食費に多くのお金をかけていることになる。そして、世帯あたりの所得が多いのもバンコク首都圏と南部だ。
ところで、家計の消費支出に占める飲食費の割合はエンゲル係数としてよく知られている。
エンゲル係数が高ければ、貧しいことを示し、低ければ豊かという指標になっている。なぜならば食費は生きてゆくために削れない。所得が少なければ、食費でお金の多くを使うため、他のことに回せるお金がなくなる、ということだろうが、本当だろうか?
そこで、各国、及びバンコク首都圏とそれ以外のエンゲル係数を比較した図を上記と同じところから拝借させてもらった。(こういうデータをまとめた点を見ても小堀氏の視点の高さが伺われる。)
上記の国の中ではアメリカのエンゲル係数が一番低く、14.9%。日本は韓国よりエンゲル係数が高くイタリアより少し低い23.1%。
タイとスペインはともに34%程度と高い。タイ全域は33.9%だが、バンコク首都圏は30.7%と少し低くなっている。タイ全土では月4300Bを食費に使っているのに対して、バンコクは6000B使。しかし、バンコクのほうが所得が多いのでエンゲル係数は低くなっている。バンコク人は収入が多いので食費にも多くを費やすが、それ以上に収入が多いのでエンゲル係数は全土平均より低くなる。ここまではいい。
バンコクの(ノンタブリでも)デパート、ショッピングモールに行くと、平日なのにいつも人がいっぱいいる。しかし、モール内の専門店を見ると、いつもガラガラ。お客さんがいるのは、食堂街とセール特設会場だけ。
もしかすると、タイ人は貯蓄に回せるお金はないけれど、食費には敢えてお金を使うのではないか。つまり、200バーツの服もなかなか買わないのに、レストランで200バーツは比較的軽く(気安く)払うように見える。家の部屋には何もないのに、家族や親戚や友人とよく酒盛りをしてお金を使う。
- 刹那的に楽しみを求め楽観的な性格なので誘惑に負けて使ってしまうのか?
- それとも家族や人との繋がりを大切にしているからなのか?
- あるいは明日のことより今のことを大切にしているからなのか?
- 明日のことなど考えずに、美味しいものを食べたいから食べてしまって、気がついたらお金がなくなっているだけか?
いろんな要因が複雑に混じっているので簡単ではないが、お金をどう使うかは、生き方、価値観により大きく影響されることは確かで、日本人とタイ人とでは全く異なる。
エンゲル係数は生活水準を表す指標として知られているが、食料品の価格の違い、生活習慣の違い、価値観の違いがある国と国の間では、必ずしも豊かさを示す指標にはならないということを改めて実感するこの頃でした。
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