息子の結婚式
先日、息子の結婚式に行って来た。日本に帰国した主目的はこれだった。
僕は、若い頃に親友の結婚式でのスピーチで大失敗してから、結婚式トラウマになっていた。
あの時、その場を盛り上げようとして、結婚前の二人のエピソードを紹介したのだが、それが家柄と宗教上の理由で御法度だったらしく、大顰蹙を買ったのだった。
それ以来、同僚や部下からの結婚式の招待には丁重にお断りしてきた。
しかし、息子の結婚式を断るわけには行かない。一昔前までは、新郎新婦両家あるいは新郎側の両親が主催者的立場で、諸々の挨拶と最後の締めは最低限の役割だったのだが、最近は「両家の」と言うより「二人の」門出を祝うものになってきている。両家はトラブルを起こさず大人しくしていればいい。
最後の締めくらいはやっても良かったが、息子には
「式はやりたいようにやっても良いが、お父さんには何もさせるな。」と言ってあったので、準備等は全部息子夫婦がやり、僕の役割はお金と顔を出すだけだった。
式は人前式で、披露宴は昔息子がやっていたバンド仲間の生演奏も交えた寛いだ雰囲気で行われたので、本当に何もせずに済んだ。息子も得意のテナーサックスでバンドをリードして盛り上げた。最後の締めも息子がしっかりやった。やってみると、その方が自然だと感じた。形式張った、歯の浮くようなお世辞スピーチは一切無く、笑いが飛び交う気さくな披露宴だった。新婦側の両親も大満足だったようで安心した。
実は、息子夫婦は1年前に既に籍を入れ、共に暮らしていて、一歳の子どもを連れての式だったが、それも皆承知のことで違和感はなかった。
新婦は子供が出来てから父親に息子を紹介したらしく、お父さんはびっくり仰天、晴天の霹靂だったらしいが、その一年前から我が家には遊びに来ていて、泊まっていくこともあったので、僕と妻は「やっぱりできちゃったのね。」という程度だった。
ある時、何時までも寝ている息子を起こそうと部屋を開けたら、彼女が息子に寄り添って眠っていて驚いた。僕が寝てから帰って来たので、来ていることを知らなかったのだ。その時見た彼女の寄り添い具合で、「ああ、この二人は上手く行くだろう」と思った。
女は、眠っている間にも無意識に愛する人に寄り添うものだ。だがら、男はベッドの端に追いやられる。
これが愛の証。それ以外に信用出来るバロメーターはない。