部屋の鍵を忘れ、2階から侵入
スラタニーからオフィスに帰ってきたら、部屋の鍵がない。
かばんに入っているはずなのにない。
部屋の鍵を忘れたのは、これで二回目。
前回は、部屋の貸主からキーを借りて、なんとか部屋に入れた。(貸主が帰ってくるまで4時間以上、外で待つ羽目になったが。)
しかし、今回そのキーは部屋の中。
もう予備キーはない。絶体絶命。
もう暗くなっていて、何が何でも部屋に入るしかないが、入る入り口がない。
一階のトイレの換気窓は用心深くロックしてきた。表玄関からは3つのカギを開けないと入れない。
裏からオフィスのビルを見上げると、2階のトイレの換気窓が少し開いていた。
そこから進入するしかない。
しかし、そこまでどうやって登ればいいのだろう?
一階の壁にはしごを掛けて、そこから1階の小屋根に登り、次に2階のテラスによじ登って、そこからトイレの換気口に入れば行けそうだった。
しかし、換気口は高い位置にあり、足からは入れない。頭から入るとすると、中で頭から床に落ちなければならない。頭か首に重大な怪我を負う危険を感じた。
それから、はしごを何処から借りればいいのか分からない。
しかし、何処からでもいいので、とにかくはしごを借りてこないといけない。
じっとしていても始まらないので、まずは警備員のところに行ってみたが、はしごなんてないという。
途方に暮れながら歩いていると、新しい食堂の工事現場で若者がビールを飲んでいた。
「あのう。はしごありませんかね。もしあったら、ちょっとだけ貸してくれませんか?」と聞いてみた。
「あるよ。何に使うんだ?」
「ちょっと2階に登りたくて。」
そうして借りたはしごをマシュマロちゃんと運んで、壁の脇に立てた。
僕が登ろうとすると、マシュマロちゃんは、
「私が登る。あなたは年寄りで危ないからダメ。こういうことは私の方が上手い。」
まさかの展開に口論となったが、確かに僕の方が事故に遭う確率が高いかも知れない思ったので、少し体裁は悪かったものの彼女の言うとおりにした。
ところが、背の低い彼女では、一階の小屋根にあと少し高さが足りずに、どうしても登れなかった。
仕方がないので、はしごを返しに行って、「もっと高いはしごありませんか?」と工事現場の若者に聞くと、
「これしかないな。どうして2階に登りたいんだ?」と聞き返された。
事の始終を説明すると、
「なら、俺たちが登ってあげてもいいけど」
工事現場で酒を飲んでいた見知らぬ若者に部屋に侵入してもらうのは甚だ危険なので躊躇したが、もはや他に選択肢はなかった。
「じゃあ、ちょっと試してみてくれないか」と頼んでしまった。
幸い、それほど酔っ払っている様子はない。
若者が二人、また同じはしごを持って裏庭に行った。どうやって進入するか僕の計画を説明すると、
「分かった、俺が行く。」と一人が言った。しかし、はしごを掛けてから、
「いや、やっぱりお前が行ったほうがいい。お前は鳶職だからな。」
そう言われて、もう片方の若者が安スリッパのままはしごを登った。
はしごを登りだして、一階の小屋根まで3秒。
小屋根から2階のトイレの換気窓まで3秒。
素晴らしい速さだった。
それから、換気窓に頭を突っ込んだと思ったら、3秒後には全身がするっとトイレに入り、すぐに携帯の明かりがついた。身長くらいの高さの窓から頭から入って、どうやって着地したのか、素早すぎで分からなかった。
次に、カギの置いてある場所をもう一度説明すると、10秒後に一階のトイレの換気窓が開いて、カギが出てきた。
そのカギで正面玄関を開けて、僕達は無事に部屋に入ることができた。
若者たちには、200バーツの謝礼を渡した。
それから侵入した2階のトイレの換気窓をロックした。
結果として、進入する方法やカギの置き場所を教えてしまったわけなので、今度は空き巣に入られる恐れがあるのだが、お互い顔が割れているので、そんなことはきっと起こらないだろうと思うしかなかった。
カギは、マシュマロいちご園の家の中に脱ぎ捨てたズボンのポケットの中にあった。
ゲロゲロ。脳みそが溶けてきた。
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