花のピラミッド
マシュマロいちご園のシンボルは日本いちごのピラミッドだったが、日本のいちごが思ったようにならなかった。
ピンクの花のいちごは病気に弱く、疫病か根腐れ病でどんどんと枯れていき、生き残った株も何かの病気かアザミウマの被害で、ポツポツとピンクの花を咲かせるものの、美味しそうないちごが成ってない。
別のジャンボいちごは、病気に強く草勢も強いのだが、暑さのせいかこの1ヶ月、いや2か月くらい花も実も僅か。売りの大粒いちごも成ってない。
いろいろ問題はあるが、ピラミッドにしたことで薬剤散布や手入れが行き届かなかった点が失敗の一因でもあった。
そこで、ピラミッドのいちごは下ろして、代わりに花を飾ろうということになった。
花はサフィニアが良かったが高いので諦め、普通のベチュニアにした。たまたまルーイ県に出掛けていた妹夫婦が見つけ、運良くルーイの花屋から一株4バーツと格安で入手することが出来た。
これで600株もある。三色だが、ピンクのは少し色が違う2~3種類の混合。
いちごを下ろし、二株ずつビニールポットに植えたものを並べて、花のピラミッドが完成した。1基400株近く使ったので、もう片一方のピラミッドは半分いちごで半分ペニュニアとなった。
いちごを下ろすときのマシュマロちゃんの機嫌は最悪だった。
病気がちで頼りない株は上から投げ捨てるように扱い、僕は怒って喧嘩になった。
「日本のいちごは将来へのカギなんだから、もっと大切に扱え!」
「タイで日本のいちごはやっぱり無理なのよ!」
タイのいちごと同じように育てて上手くいく確率はもともと数分の一以下と思っていた僕としては、「この株はこのやり方ではダメ」と確認されたに過ぎないが、
きっともっと素敵な夢を描いていた彼女は、思うようにならなかったのが僕以上に悔しくて悲しかったのだろう。
後で冷静に考えてみると、僕もこの株についてはこれ以上追求するのはやめようと思っていたので、実際問題大切に扱ってみたところで仕方のない話だった。
ともあれ、シーズンが終わるまでの売上向上のためには、ダメないちごを飾っておくよりは、綺麗な花に替えたほうがいい。
いちご園を訪れる人の8割は、ここで写真を撮って帰るので、ピラミッドはマシュマロいちご園の大切な資産なのだ。