忘れ物事件その1
三週間ほど前のこと。
何処をどう探してもパスポートが見つからない。それはもう二日間かけて、あらゆるところを探したけれど見つからない。
最後にパスポートを使ったのは、マシュマロちゃんと一緒に郵便局にEMS郵便物を受け取りに行った時だ。本人確認のためにパスポートが必要なのだった。パスポートの方はコピーでも良いのだが、その日は現物を持参した。そして、郵便物を受け取った際、パスポートを返してもらったのを確かに覚えていた。
郵便局には僕が彼女の車を運転して行ったので、国際免許証とパスポートの両方を持参して行ったのだが、不思議なことに国際免許証だけが手元にちゃんとある。
以上から、郵便局以降どこかで落としたとしか考えられなかった。
パスポートの再発行は日本大使館で出来る。
しかし、
- 盗難証明書(ポリスレポート)
- パスポート用写真2枚
- 戸籍抄本(又は謄本)申請前6ヶ月以内に取得したもの
- 大使館窓口にある書類 「紛失一般旅券等届出書」「一般旅券発給申請書」
- 手数料 4,710バーツ
が必要となる。
ここで、多くの場合、戸籍抄本(又は謄本)申請前 が問題になる。そんなものを持ってることは滅多にないだろうから。もちろん、僕も持ってなかった。そこで、まず日本の家族に頼んで、戸籍抄本または謄本を代理で取ってもらい(そのために委任状の現物を家族に郵送しないといけない)、得られた戸籍抄本を郵送してもらわないといけないことになる。(しかしながら、未確認情報だが、実際には戸籍抄本(又は謄本)はなくても、亡くしたパスポートのコピー、住民票等役所が発行した本人確認の助けになる書類のコピーがあればなんとかなる場合が多いらしい。)
ノンイミグラントビザは、大使館が発行する再発行依頼書をその土地のイミグレーションに行って示せば、新しいパスポートにビザを記載しなおしてくれるらしい。
どうにもならないのはリエントリーパーミットで、これはもう一度お金を払って再発行してもらうしかない。
いずれにしても、膨大な時間と手間とお金のロスとなる。
しかしやるしかないので、まずは警察に行って盗難証明書を書いてもらうことにした。
ここで、僕にはその後もう2つEMSが日本から届いていた。車の経路から、まずは郵便局に行ってEMSを受け取り、その帰りに警察署に行くことにした。
郵便局では、以前から用意していたパスポートのコピーを使用してEMSを受け取ることが出来た。
用事が済んで郵便局を後にしようとしたその時、念の為にパスポートが落し物等でなかったかどうか聞いてみた。
「数日前に、ここでパスポートを使ってEMSを受け取ったのですが、その後パスポートが見つからないんです。何か心当たりはありませんか?」
すると、どうでしょう。EMSを手渡してくれたときは何も言わなかった職員が、
「ああ、もしかしてこれか?」と引き出しから僕のパスポートを取り出した。
警察に届けることもなく、一週間もそのまま郵便局で預かっていたのだった。
数日前に大きな郵便物を受け取る際に、僕は返してもらっていたパスポートを机に置いて、そのまま忘れてしまったらしい。
さっき使ったパスポートのコピーと照らしあわせ、僕のパスポートは帰ってきた。
その時の安堵感といったら表現しようがないほどだった。やっぱりパスポートは命の次に大切。僕は警察に行く必要もなくなり、晴れ晴れした気分でオフィスに戻った。
ところで、こうした場合、忘れ物はそのまま預かっておくのと警察に届けるのと、どちらが正しいのだろうか? 警察なら、警察組織であるイミグレに問い合わせて僕の所在が分かったかもしれないが、ワンステップ入ることで迷子になる可能性もあった。
郵便局で預かっていてくれたのと、念のために聞いてみたのと、警察所の前に郵便局に行ったのがラッキーだった。